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#島ぐらしと魚たち 10月

エビカニ好きの楽園、屋久島

実は屋久島には、様々な美味しいエビカニがいることをご存じだろうか。
有名どころではイセエビやアサヒガニ。
今や超高級品のセミエビ、市場に流通しないアカモンガニ。

磯に行けば味噌汁の出汁に最高の磯ガニがたくさんいるし、

川にはスジエビやテナガエビ、ブラックタイガーのようなテナガもいる。
唐揚げかき揚げが最高なので、食べるためにわざわざ取りに行く。

港の岸壁には大きなガザミが付いていることもある。

海に潜ればゴシキエビやニシキエビという大型のイセエビもいる。
中には成人男性の背中サイズになる大物もいる。
屋久島の海の豊かさを感じずにはいられない、驚愕の大きさ。

9月になると、イセエビ漁が解禁になる。
屋久島では赤・青・ブチの3種類のイセエビが水揚げされている。
学名は、赤がイセエビ
ブチはカノコイセエビ 細い触角が紅白の縞模様が目印
青はシマイセエビ 体が青(緑?)ぽくわりと大型
お値段も、赤、ブチ、青の順に高く、おいしさもそれに比例しているとか。
でもね。
3種類並べて食べ比べでもしない限り、私には味の違いはわからず、どれも皆おいしい。
パエリアにすれば旨味と迫力にノックアウトされるし、新鮮な身のお寿司なんて、甘みがたまらないだの最高だの言って食べ過ぎて、ついには生エビアレルギーを発症するに至ってしまった。泣きたい。

カニ部門だって負けていない。
11月解禁のアサヒガニは、カニなのに後ろにしか歩けず、まだ茹でられてもいないのに海中にいるときから朝日のように真っ赤なのだ。
おちゃめな生き方に反して、その身のおいしさと言ったら。
全国的に有名な毛ガニに近い身質だが、甘みと風味はアサヒガニに軍配が上がる。
身をたくさん持つのはオス、ミソがおいしいのはメス。
メスは卵を持つために尾が太いので、見分ける際の参考に。

先月のウナギ同様、アサヒガニもまた鮮度が命。グラグラと茹だった熱湯に入れる瞬間は、本当に胸が痛む。何分茹でる、という明確な時間はなく、甲羅としっぽの間に隙間が開くまで、である。
熱々の甲羅に力を込めて、バキャっと外すとこぼれ出るカニ汁とミソたち。
1滴でも無駄にするものかと慎重に甲羅を置き、日本酒を適量注いで火にかける。
その間に胴を縦半分に切る。
そこへ現れるのはぎっしりと詰まった白く輝く身・・・と、にっくき隔壁。(かくへき、という薄い殻)この隔壁がなければ食べるスピードが10倍になっているのではないだろうか。
かぶりつきたい欲求を抑えながら黙々と身を取り出す。
そうこうしているうちに甲羅焼きができあがるので、まだ湯気の立ち上る身を焼き煮詰めたミソにつけて口へ放り込む。深い深いため息とともに私の身体も溶けて、気体となって空へ登っていきそうなほど、旨い。

美味しいものを食べるには、手間や苦労が伴うものだということを、屋久島に来てたくさん学んでいる。そして、食べ過ぎて痛い目に遭うということも。
だとしても、屋久島だからこそ味わえるこの美味しさからは、到底離れることはできないのである。

…………
川東繭右(かわひがし まゆう)
東京都目黒区出身 
島の魚に魅了され、2011年屋久島に移住
学校司書補として勤務する一方で、魚の面白さや美味しさを普及する活動を行なっている
趣味は魚の耳石集め
好きな魚はクサカリツボダイ ヒトミハタ
お魚マイスターアドバイザー
水産庁魚のかたりべ
鹿児島県指導漁業士
https://www.facebook.com/yakushimaosakana/