ロッカーは見えているか

私は大きいお風呂に入るのが好きで、よく銭湯に通っている。そしていつものようにロッカーに荷物を入れるのだが、使う場所にはこだわりがない。ただ、何段目を使うか、というのは決まっている。比較的身長が高い方なので、大体4段ある内の一番上。無理なく取り出せるし、あんまり使う人もいないので他の人にもいいだろう、という考えから、銭湯に限らずプールでもコインロッカーでも一番上を選ぶようにしている。

ただ、一般的にはロッカーの一番上の段というのはあんまり使われないどころか意識されない場所のようで。上記のように場所にこだわりはないので、基本的に同じ列で先に誰かが使っているロッカーがあればその列を避けて選ぶようにしているのだが、私がお風呂に入った後に、使っているすぐ下を誰かが使っていることがちょくちょくある。それも、別に空いているロッカーがある状況で。ある時は銭湯に入っている人数が3人で、私と別の人が上下並んでロッカーを使っている、なんてこともあった。

ちょっと前まで、自分の下のロッカーを選ぶ人は、視野が狭いと思っていた。普通に考えれば、同じ列を2人で使うと、バッティングしたときに不便だ。相手の着替えや準備に配慮しながら、自分の用事をこなさなければならない。なので、空いているならば先客の使っている列のロッカーは避けるべきだし、そんなことすら気がつかないのは大人としてどうなのか、と。私が男にしてはのんびり湯船に浸かりがち、というのもあるのかもしれないが、案の定着替えでバッティングした時は、正直軽くイラついてしまっていた。

先日、荷物をロッカーに入れてからトイレに行きたくなったので、用を済ませて更衣室に戻ると、たまたま私のロッカーの下に荷物を入れようとしているおじさんがいた。最初またかよ、何で私が上使ってるのがわかんないんだよ、と思ったのだが、その行動を見て初めて気づいたことがある。そもそも、多くの人に一番上のロッカーの存在は見えていないのだ。

人間、普段使わなかったり接していないものは、存在を認識できないもの。たまたまこの文章は2020年のハロウィンに書いているが、私は今まで仮装もハロウィンパーティーに参加したこともないし、今後もすることはないだろう。私の見えていない文化、世界は山ほどある。他の多くの人にとって見えていない小さな例が、一番上の段のロッカーだった、ということなんだろう。

単なる屁理屈かもしれないが、認識されていないと思うことで、個人的にはイライラが消えた。一方で、自分の接している世界を増やす努力の必要性を、改めて感じてもいる。全てにおいて凝り固まってしまわないように、精神的に柔軟なおじさんでありたいもの。

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