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雑記帖

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日々思い浮かぶよしなしごとを書いた雑文をまとめる雑記帖です。
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2020年1月の記事一覧

おねだりは整然と

「あのね、ちぃちゃんはご本をたくさん読むから、これを買って欲しいの」

小学校に上がる前ぐらいの女の子が、お母さんに説明している。

あの歳のころ、私はあんなふうに整然と話せなかったなあ、とつい我が身を振り返る。そこは文具店で、私も文具を求めに来ていたのだった。

ちぃちゃんの希望を聴いたお母さんは、「そうだね、これがあるとよさそうね」と応じている。

私もご本をいくらか読むから、それがあるといい

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学校出てから十余年

人間を始めてから、そろそろ半世紀になろうとしている。

それだけの時間を地上で送ってきたわりには、いまだに分からないことだらけで我ながら当惑してしまう。

そういう気分を味わうたび、思い出すことがある。比べるのもおこがましい限りだけれど、ゲーテの『ファウスト』の冒頭、書斎だか仕事部屋だかでイスに腰掛けたファウスト博士が、こんなふうに嘆いていた。

自分は哲学に医学に法律学に神学まで究めたというのに

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キータッチは情熱的に

飛行機の座席で、隣に座ったのは、ちょうど筒井康隆さんが50歳のころはこんな様子だっただろうかという人で、髪をポマードでなでつけ、ピンストライプのスーツを着ている。

膝にノートパソコン(年季の入った東芝レッツノートで、OSはいま話題のWindows7のように見える)を広げて、バチャバチャと音を立てがなら猛烈な勢いでなにかを入力している。ときどきエンターキーを押す際には、決めポーズのように右手がちょ

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タガタメニ

1月17日は、黒川文雄さんの企画・進行のイヴェントに登壇して、「ゲームプランナーとゲームプロデューサーの境界線」というテーマで1時間ほどお話をした。

会場に集まったみなさんの様子を見ていると、中学生やゲーム畑ではない方もいれば、私以上にゲーム開発の経験が長そうなヴェテランの人もいる。どなたでも参加できるイヴェントなので不思議はない。

不思議はないのだが、話し方を考えねばならぬ。できたら中学生と

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「役に立つ」という見方は役に立つか

なにかが役に立つ/役に立たない、という議論にはちょっと気をつけたい。

というのも、なにかが「役に立つ」とか「役に立たない」という場合、ほとんどはそう言っている人が、たまさかその時念頭に置いている目的に照らしてのことに過ぎないからだ。

例えば「文学なんて役に立たない」という人がいるとしよう。このとき、早とちりしてはいけない。この言い方は、あたかも一般的な主張のように見える。つまり「文学なんて、誰

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2020年の展望

*2020.01.02 PM15:40加筆しました。

今年2020年は、昨年実現できなかった仕事を形にしたいと考えています。
(書名はすべて仮題です)

1. 『日本語文法小史』(書き下ろし)
2. 『科学の文体』(書き下ろし)
3. 『記憶のデザイン』(書き下ろし)
4. 『マルジナリアでつかまえて』(連載の単行本化)
5. 『人生がときめく知の技法』(吉川浩満くんとの共著)
6. 『人文的、

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