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2019年12月の記事一覧
こちらまでおいしくなる
食堂でお昼を食べていると、隣にそのお店の常連らしいおじさまが座る。
注文した皿が運ばれてくると、「これはおいしそうだ」とおっしゃる。その様子がなんというか、心の底からそう感じているのを口に出さずにはいられない、という風でどうも聞いているこちらまでニコニコしてしまう。
食べている最中も、「うん、じつにうまい……」とつぶやき、食べ終わってからも、皿を下げにきたお店の人に「いやあ、ほんっとうにおいし
因果のもつれ、餃子とビール
エレヴェーターに乗る。
他には誰もいない。
ただし、ニンニクとニラとアルコールの混ざった匂いが充満している。
誰か思うさま餃子とビールを楽しんだ御仁が降りた直後かな。
とかなんとか想像していると上昇が停まる。私が降りる階ではない。
人が乗ってくるとき、ちょっと顔をしかめた。
ね、やっぱり感じますよね。でも、これは私が乗る前から……
と釈明するのもなんだか違うような気がする。
あと二階の辛抱
コーヒーを飲んだから
カフェであたたかいコーヒーを飲む。
外に出てぶらぶら歩く。
ジャケットのポッケに手を入れるとガムが入っている。
一粒食べようかな。
でも。
口のなかにコーヒーのあたたかみがほのかに残っている。
もうちょっとあとにしよ。
鼻唄を歌いながら歩く。
きみと文芸の戦いでは……
ここ数日、1人ブンゲイファイトクラブをやっていた。
というのは言ってみたかっただけで、自分と殴り合いをしていたわけではない。
季節に一度の文芸季評を書くため、文芸誌の山ととりくんでいたのだった。
小説や詩を読むのは嫌いではない。むしろ好きなほうだが、仕事として読むのは少々しんどい。なんらかの評価をするという目的が念頭にあるので、ただ楽しむというわけにいかないからだ。
楽しみのために読むなら、