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【感想】実写版リトルマーメイド

小さい頃、私はキュアドリームになりたかった。母にお願いして同じ髪型にしてもらって、ワクワクしながら鏡をのぞいた。だけどそこには黒い髪のお団子頭が写っていていた。「髪がピンク色じゃない私はキュアドリームにはなれないのだ。」と非常に落ち込んだ。

私はオーロラ姫にもなりたかった。母はハロウィンの日に同じドレスを着せてくれた。だけどまた鏡を見て落ち込んだ。私の髪は金髪じゃないし、目も小さくて鼻も低い。オーロラ姫にも私はなれなかった。

ディズニーの作品が大好きな私はリトルマーメイドが実写映画化すると知った時、必ず見に行こうと思った。赤い髪を靡かせる破天荒な歌姫を私は予想していた。白い肌に緑色の尾ヒレだろうと疑わなかった。

だからアリエルのキャストを知った時は驚いた。「これは私の知っているアリエルでは無い。」とがっかりした。どうしてアニメーションとはかけ離れた容姿をしている俳優がキャスティングされたのかと悶々とした。

少し経ってから、実写版アリエルと同じ肌の色の子供たちが映画のティーザーに泣いて喜ぶ姿を収めた動画を見た。私はキャスティングに落ち込むのをやめた。彼らの笑顔を見ていたら、なんだかこれで良かったのかも知れないと思い始めたからだ。今思えば、一連のヘイトも称賛もまるで自分は関係無いかのような態度で物凄く上から目線で捉えていた。本当に恥ずかしい。

そうして今日、待ちに待った実写版のリトルマーメイドを観に行った。
歌や映像美は勿論、大人になってから感じたアニメーションへの違和感やリアリティに欠ける描写もアニメーションの良さを残しつつアップデートされていた。今も興奮が冷めやらない。
あんなに気にしていたアリエルのルックスは、始まってみれば何も気にならなかった。むしろ彼女はアリエルでしかなく、私はセバスチャンと同じくらいの熱意で「キスしろ奉行」と化していた。

それどころか、今回の事は多様性を尊重するために有色人種が主人公のディズニー作品を増やせばいいという話では無かったのだとようやく気が付くことができた。誰もが憧れる国民的なプリンセスを有色人種が演じることに意味があったのだ。

肌の色が違っても、背が低くても、可憐な容姿じゃなくても彼らみたいになれるのだと。憧れて良いのだと。憧れと似ても似つかない容姿に落ち込んだ5才の私が全肯定された気がした。
私だって実写版アリエルに嬉し泣きする子供の1人だったのだ。
アリエルがハリー・ベイリーで本当に良かった。

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