見出し画像

知っておきたい高齢者の薬の使い方~⑦鎮痛薬


「痛み」とは

「ズキズキする」「チクチクする」「ヒリヒリする」など、痛みには色々な表現があります。そして痛みの原因も、怪我によるものから心理的なものまで様々です。
そんな痛みについて、国際疼痛学会は以下のように定義しています。
組織損傷が実際に起こった時、あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験。“
「それに似た不快な感覚および情動体験」とは、検査や医師の診察などで痛みの原因が分からない場合も、痛みとして定義づけることを意味しています。

痛みの種類

痛みは原因によって大きく3つに分けられます。

①侵害受容性疼痛

皮膚や内臓の刺激、炎症を原因とする痛み
・ 切り傷
・ やけど
・ 打撲
・ 骨折など

②神経障害性疼痛

痛みの感覚と関係する神経に異常が起こり生じる痛み
・ 坐骨神経痛
・ 帯状疱疹など

③心因性疼痛

心理的なものが原因の痛み
・ 不安
・ ストレスなど
特にがん治療中の場合には、これら3つの痛みすべてへの対応が重要です。


鎮痛薬の種類

痛みを抑えるために使われる薬には、下表のようなものがあります。
抗てんかん薬や抗うつ薬は、表にあるような薬剤が適応がありますが、適用外のものも使用されます。

鎮痛薬の種類

鎮痛薬で押さえるポイント

高齢者の痛みを理解する

痛みがあっても我慢や遠慮をして、なかなか言い出せない高齢者もいらっしゃいます。中には医療職にはうまく伝えられなくても、身近な存在である家族やヘルパーさんには話しやすい方も多いでしょう。
鎮痛薬を以前から処方されている方でも、痛みの場所や程度、時間帯などは病気の進行や体調、環境などによって日々変わっていきます。痛みを抱える高齢者に寄り添いながら、痛みの状態を適切に聞き取るポイントには以下のようなものがあります。

◎痛みのある「場所」
「どこが痛みますか?」「どの辺りが痛みますか?」など具体的に痛い場所を聞きましょう。

◎痛みの「種類」
「チクチクした痛みですか?」「ズキズキするような痛みですか?」のように例を出しながら、どのように痛むのか確認しましょう。

◎痛みの「程度」
「じっとしていても痛みますか?」「動くと痛みますか?」「どのくらいの痛みですか?」「10段階でいうとどのくらいですか?」などと尋ねます。
また、痛みのフェイススケールを用いる方法も有効です。

痛みの状態を確認したら、医療職に報告しましょう。必要に応じて鎮痛薬の量の調整や種類を変えるなどの対応を行うことで、高齢者のQOL向上にもつながります。

薬の副作用や使用する際の注意点を知る

先ほど表で示したように、鎮痛薬には様々な種類があります。高齢者が安全に薬を服用できるように、薬の説明書を確認し副作用や使用方法などをしっかり把握しておきましょう。
鎮痛薬は「痛みがあったら使用する」「痛みがなくても使用する」など、使用するタイミングが薬によって異なります。薬剤師に事前に確認しておくと安心です。
そしてNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)には、胃潰瘍などの消化器症状、腎機能障害などの副作用が報告されています。また麻薬性鎮痛薬は、吐き気、便秘、眠気、呼吸抑制、尿が出にくくなるなど多様な副作用が起こりえます。副作用と思われる症状が見られたら、すぐに医師や薬剤師への報告が必要です


*****

<監修>
堀美智子
薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター医薬研究所所長。名城大学薬学部卒・同薬学専攻科修了。著書、メディア出演多数。
株式会社エス・アイ・シー https://www.sic-info.co.jp/