暮らしの薬学【スキンケア・フェイシャル編】～④ 健康な肌の条件、ニキビケア
トラブルのない健康な肌でいたい！
顔の皮膚は、体の皮膚よりもとても繊細です。間違った洗顔をしたり、スキンケアを怠ると健康な肌を保つことはできません。ここではフェイシャルスキンケアのまとめとして乾燥肌、敏感肌、そしてニキビ肌を改善するために大切なことを説明します。
肌を健康にする条件（乾燥肌、敏感肌）
皮膚の一番外側にある角質層は外部の刺激から肌を保護し、肌内部の水分を保持する「バリア機能」を担っています。この「バリア機能」が低下すると肌は乾燥（乾燥肌）し、刺激に敏感（敏感肌）になります。
また肌の表面には、常在菌が存在し、皮脂を分解して「脂肪酸」という弱酸性の物質を作り、雑菌やウイルスなどの繁殖、活動を弱める働きがあります。洗顔剤で顔を洗うと㏗がアルカリ性に傾きますが、再び、皮脂の分泌と常在菌によって肌の状態は30分から1時間程度の時間を経て弱酸性に戻ります。ただし、タオルでごしごしと洗ったり、必要以上に皮脂を洗い流すと弱酸性が保てなくなり「バリア機能」が低下します。
バリア機能を損なわないためには、できるだけ、弱酸性の洗顔剤をつかって、正しく洗顔する、必要以上に洗いすぎない、そして洗顔後すぐにスキンケアをすることが重要です（暮らしの薬学【スキンケア・フェイシャル編】～③クレンジング、洗顔そして、スキンケア 参照）。
バリア機能を高めるためのスキンケアは「保湿」です。肌には保湿の役割を担っている「セラミド」と呼ばれる細胞間脂質やアミノ酸などの天然保湿因子（NMF）があります。これらは、洗顔時に皮脂と同様に洗い流されてしまうため、スキンケアで補う必要があります。
化粧水・乳液に使用される「グリセリン」は保湿性が高く使用後にしっとりとした感触をもたらします（暮らしの薬学【スキンケア・フェイシャル編】～③Q&Aグリセリン参照）。乳液に使用される「セラミド」（化粧品成分表示では、セラミド１，セラミド２など多種あり）、または「疑似セラミド」は、肌の上から補うことでバリア機能を高めることができます。
ニキビ治療とスキンケア
ニキビは（尋常性ざ瘡）、毛包に付随している脂腺の慢性的な炎症疾患です。ホルモンの影響などにより皮脂の分泌が多くなると毛包内に皮脂がたまり（面ぽう（コメド）といいます）、面ぽうの中で皮膚常在菌であるアクネ菌が過剰増殖することで炎症が起こり、皮膚が赤く盛り上がったり、膿疱（膿をもった発疹）ができたりする皮膚疾患です。このように、最初は、非炎症性だったものが、「赤ニキビ」「黄ニキビ」へと、炎症が進行し、さらに症状が悪化していくと「瘢痕（ニキビ痕）」に発展します。炎症が進行する前に医療機関を受診し、ニキビ治療薬を使用して「ニキビ痕」を作らないようにしましょう。
またニキビ治療と並行してスキンケアも重要です。洗顔やスキンケア化粧品に配合される「イソプロピルメチルフェノール」は皮膚上の菌類を殺菌・繁殖を抑える働きがあります。ただし、アクネ菌はそもそも常在菌の一つであり、過剰繁殖し、炎症を起こさなければ皮膚を守る役割もありますから、過剰な洗顔は注意が必要です。また、月経前や便秘、ストレス、睡眠不足、不適切なスキンケア、肌の乾燥などは、ニキビの誘因や悪化因子となることがあります。また栄養が偏った食事、血糖値を急激に上昇させるような食事もニキビ悪化と関連があると言われています。
Q．TVで洗顔石けんから食物アレルギーになったという報道を見たのですが・・・洗顔石けんがどうして？
食物アレルギーとは、卵や果物、その他アレルギーを起こす食物を食べたときに起こるものと考えられていました。TVで報道されていたのは、該当する洗顔石けんを使用していたころに、パンを食べたらアレルギーを発症したというのです。その洗顔せっけんを調べるとアレルゲンとは“加水分解コムギ”であることがわかりました。
すべてのタンパク質は人間にとってアレルゲンになる可能性がありますが、その中でも小麦のタンパク質はアレルゲン性の強いもののひとつと考えられています。毎日洗顔することでこの“加水分解コムギ”が少しずつ目の粘膜、鼻の粘膜、顔の皮膚に付着し、体内に侵入した結果、小麦を含む食品を摂取した際に食物アレルギーが誘発されたのです。このことから食物アレルギーは経口摂取だけでなく、経皮からの感作でも起こりうることがったのです。
もっと勉強したい人に ～ 参考リンク・参考図書
●暮らしの薬学【局方品①掃除編】～④ナチュラルクリーニングの使用上の注意
●小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品による全身性アレルギーの発症について（平成22年10月15日医薬食品局安全対策課）
＜参考図書＞
『メンズスキンケアパーフェクトガイド』
『賢い化粧品の選び方 ―スキンケアの正解は成分で分かる』
『部位別全身スキンケア大全』成美堂出版 2022
『トコトンやさしい化粧品の本 第2版 B＆Tブックス』