(バカな)似た者同士
パッとでも、じっくりでも、わたしと連れ合いの顔を見て、似ていると言う人は誰もいない。でも、私たちは、自分たちが似ていると思っていた。一目ぼれではなかったが、気がつくと、離れられないほど好きになっていた頃だ。
たがいの似ていることばかりに気がついた。考えることや大事に思うことが同じだった。会話中に、「それ、今言おうと思っていたのに。」と言うことがよくあった。
映画を見に行くと、同じような感想を持った。初めて一緒に映画館で見た作品は、途中で顔を見合わせて、席を立った。いちど、連れ合いが、以前に自分が読んだ本を貸してくれた。感想が聞きたいと。読み終わって、本のことを話すと、やっぱりなと、うなずきあった。
全然違う顔立ちさえ、似ているように思えてきた。それが理由ではないが、二人とも、子どもがほしいと思うようになった。
当時のわたしは、おおざっぱにだけだが、10年計画を書いていた。それを、連れ合いに見せて、じゃあ、第一子は、と話す。すると、連れ合いも、自分もだと、同じように10年計画を書いた紙を見せてくれた。そんなことをする人を実際に見たのは、おたがいが初めてだった。
私たちは、似ていることばかりだね。
紙と頭をつきあわせて、計画をたてた。
その私たちは、子づくりについての考え方の浅はかさも、共通していた。
小学生の時、わたしは、3組の双子をもつことを、人形を手に何度も考えた。最初は、女の子2人。名前も考えていた。次の年に、男と女の双子。それから、男の双子。自分は大学に行くと思っていたので、最初の子供は22才より後になる。その年令は、すごく大きい数字に思えた。子どもが何人もほしいなら、双子にでもしないと無理に思えた。
その無邪気さと無知が笑えない。
いっぺんに双子とかだと、2、3年ですむのにね。
小学生レベルの子作り案。それも、わたしだけでなく、連れ合いも。
4つ子とか、いいね。それは冗談としても、30代のうちに4人は無理かな?
わたしたちは計画をペンで書きつける。
じゃ、ここで第一子。なら、この月に妊娠。
排卵日に合わせて実行しさえしたら妊娠する、と本気で思っていた。まさか、の可能性、3%くらいで。まるで、キャベツ畑から赤ちゃん。
印をつけた日も月も年も過ぎても、コウノトリも赤ん坊も現れなかった。
でも、10年計画を二人でたてている、その頃のわたしたちの頭の中では、なにもかも自分たちが思うようになる気がしていた。
若くないのに、若いふたり。甘っちょろい、似た者同士。
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