【感想】オッペンハイマー ⭐️5/5
ネタバレあり。
この映画が何なのか?と言われたら、
オッペンハイマーの映画というよりは "これがアメリカ"
という感じの作品で、オッペンハイマーを中心にした核開発に対するアメリカの自己批判的な作品かと思ったら、実はもっと大きなアメリカの病を描く作品のように思いました。
何か有望な技術があれば金を注ぎ込み、人材を集めて挑戦する。自分たち以外はその技術を扱えるわけがないと過信して、不都合があれば"あれは間違いだった"と切り捨てる。
ナチスが投降して開発競争が不要になった後に、なぜ原爆開発を続けた理由として、『この威力を見せつけてこそ、民衆は平和を理解する』と科学者を鼓舞するオッペンハイマー。
彼は核開発が招く不幸を承知しているにも関わらず、突き進む。軍上層部がいつどこに原爆を落とせば効果的かと悠々と語る場面は見ていられなかった。
『その賞は君への賞賛ではない。その賞を与えた人が許されるために君を賞賛するんだ』 という様なアインシュタインのセリフも印象的でした。
どうもノーランはオッペンハイマーに自身を重ねているよう。サポートしてくれる弟ジョナサン・ローラン、奥さんエマトーマスは作品中の配役と被る。分野の専門家としてでは無く取り纏めとしてのオッペンハイマーと監督という役職も重なる。
そこで、"この賞により許される"について考えてみる。
アカデミー賞を取ったという事は、エンタメとしてあなたのやっている事は素晴らしいと認められたということ。そして、それは自分たちアカデミー会員が許される為に賞を与えた。という風にも見える。
でもノーランの内心は、本当にこいいんだろか…史実をネタにして制作の専門家取り纏めてるだけじゃない??…。
でもみんな賞くれるし…。というノーランの苦悩が伺える気もする。
応援したい。頑張れノーラン。
核開発の問題に関わらず、よりミクロな視点で考えれば、食肉、安価な商品の消費、クリエイターの搾取等、常に人生はトロッコ問題的な選択の連続で成り立っているとも言えると思います。
根本的には、この選択に対する罪との向き合い方がテーマの作品のように思いました。
役者陣も素晴らしかった。個人的に好きな俳優多すぎて眼福。。。エミリーブラント、フローレンスピューの安定感。ラミマレック素敵。
理系は聞いたことある科学者がいっぱい出るのも嬉しい。
難解で台詞も多いし、日本人として思うところのある作品でもモヤモヤしますが、
オッペンハイマー≒ノーラン
アメリカ≒映画界
だから、日本も広島も蚊帳の外。
でもそんな状況に苦悩するノーラン。
そんな私小説的作品という楽しみ方もあるかと思います。