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NEWS「NO、9 胡氏退場の謎」

1,胡氏退場の詳細

新たに公開された映像によると、胡錦濤前総書記が赤いファイルの中身を見ようとした時横にいた栗戦勝氏がそれを阻んでいる。その後に、中央弁公庁(総書記の日常業務全般を取り仕切る)の副主任(日本で言うところの官房副長官)が習氏の所に来て指示を受けている。その後、係員に右腕を抱えられながら胡氏は退場している(因みにこの係員は以前も胡氏の退場の際に登場している)。
胡氏の体調不良説に関しては79歳になる氏が共産党結党100周年記念式典で付き添いをしていたことやBloombergによると未確認ではあるが以前の赴任先であるチベットで心臓を患ったという情報がある。国営新華社通信も胡氏は体調不良であったと報じている。
此処であえてメンツを重要視する中国という観点に立って考察したい。これから国際メディアを入れて撮影が始まるという時に、調和を乱す必要があるのか。現に、最前列の最高指導部の面々は両手を机の下に閉まっているか、少なくとも机上の書類は整理されている。また、胡氏の表情を見ると終始ボーとしており現状が認識できていない様にも受け取れる。仮に胡氏が書類を取り上げられたとするなら栗戦書に対して怒りの表情を向けてもおかしくない。また、胡氏が眼鏡を外している点も気になる。私はここで新たな説として習氏が完璧な撮影状態を作りたいにも関わらず、胡氏が準備できていないため排除された可能性である。

2,誰が得する?

胡錦濤氏の退場劇は国際社会の衆目を引いているが、決定をする前に根回しを済まして投票自体は予定調和で行われることの多い中国においてこの退場劇で得する人物はいるのだろうか。特に、このシーンに関しては中国国内のSNSでは検索できない状態であり、明らかに国民には見せたくないシーンであったことは確実である。
 習近平氏が自身の権力を見せつけるために胡氏の意志に反して退場させたという説があるが、私はこれに関しては懐疑的である。国内には党派対立がある事を見せるのは得策では無い。寧ろ、一致団結した共産党を見せる方が有意義である。現に、習氏の横に前総書記である胡氏を座らせているのも党内融和を見せるためである。取り上げられた赤いファイルから幹部人事であろうと思われる一部が見られるため、恐らくこの件に関して胡氏が退場後の採決に際して何らか異議を述べるないしは反対票を投じる可能性があったためそれを阻止したのではないかと考える。つまり、一応、習氏が得をする訳だか、様々な言説(邪推を含めて)が広がる形になりその面では損をしたとも言える。
 

3,先行き

習近平氏が3期目の総書記に選出されて以来、中国の株式市場は一環としてネガティブな反応を示している。Bloombergによると中国株65銘柄より構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は930億ドル(約13兆8600億円)を吹き飛ばした。最高指導部である中央政治局常務委員会のメンバーが概ね習派によって占められた。市場関係者は習氏が統制路線を強化する可能性やそれに伴う企業活動への支障、更には米中対立の更なる悪化を懸念している。アメリカは民主党政権が誕生以降も対中政策に関しては共和党政権時代と同様に厳しい姿勢を貫いている。習氏は意思決定をし易くなった一方で、その決定がもたらす影響については不透明さが増している。



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