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羅刹の紅(小説投稿)第八十五話

〇あらすじ
普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校でかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は度重なる任務の失敗(主に一般部が原因)のため五大幹部の会議が行われていた。そこで偉炎が通う高校である「広星高校」の地下にある財宝を強奪することが決まる。一方、その情報を手に入れた一般部はこれを撃退することにした。襲撃は、広星高校体育大会当日、一般部と赤虎組の衝突は近い・・・しかし、そんな時期に雪愛は体育大会の準備でクラスメイトと喧嘩してしまうが

〇本編
彼女は成長した。
(雪愛・・・)
 偉炎は少し感心した。感心できるような立場ではないが雪愛がどのような生活を最近まで送ってきたのかをある程度知っている。だからこそ、誰かに妥協する姿を半分驚いているのだ。
「うん!分かった!ありがとう!」
 隠葉は本気で喜んだ。おそらく、隠葉は学校に復帰したばっかりの雪愛と本気で仲良くなろうとしていた。やはり、彼女はある性格であるためどうしても一人になっている時が多い。だから、自分と自分の友達と仲良くしてほしいと思いTシャツのデザイン作成を一緒にすることにしたらしい。
「・・・僕の出番は?」
 偉炎はデザイン考案を女子二人に任せることになったのでやることがなくなってしまった。
 ただ、その後は夕方から部活があった。三回戦に進むことになり、七人しかいない部員たちは案外真剣に練習にいそしんだ。フォーメーションの確認やランニングスローの繰り返し・・・苦ではあったがそれぞれが楽しそうにしていた、もちろん偉炎も例外ではない。
 部活が終わったのが夜の六時、これで学校の行事がすべて終わり・・・ではなかった。一般部の三名は保健室に集まり体育大会の日のための対策を練っていた。
「もし、あいつらが校門から攻めてきたら避難誘導は優雷、反撃は偉炎と切風で行う。救護は雪愛。これでいいか?」
「いや、そもそも侵入されないように交代で学校の外を観察するほうがいいわ。ありがたいことに学校は丘にある。そう簡単に侵入することは難しいはずよ。」
 そんなこんなの会話を三十分以上話す。そして、下校時間になるので帰るという日程を毎日続けている。高校生には負担が大きすぎるかもしれない。
「あーーーみんな、少しいいかな!」
 いつも通り保健室から帰ろうとすると切風が三人に話しかけていた。
「明日だけど、夜にみんなで外出しないか?ちょっと行きたい場所がある。」
 保健室の先生から生徒に夜の誘いを受けた。
「もっちろーーーーんです!楽しみにしています!」
 相変わらず元気な優雷がそれを一言でOKした。
「いいけど・・・変な事ではないだろうな?」
 偉炎は疑いから始めた。このパターンでいいことは何一つないことを彼は学んでいる。
「いやだなー、お姉さんがいいこと教えてあげるだけだよ♡」
 絶望でしかない。しかし、ここで断ることはあまりプラスになると偉炎は思わなかった。
「・・・まぁ、遅くならなければいいけど。」
「OK!偉炎と優雷は部活が終わったらすぐに保健室に来るように。雪愛ちゃんは体育大会の準備とかがんばってね。」
 こうして慌ただしい一日が今日も終わった。それでも偉炎はある程度充実した日々を過ごしていた。そして、普通であることにかなりの喜びを感じていた。それが原因か分からないがその日の夜空はきれいだった。

 翌日、偉炎と優雷はいつも通り部活が終わった後保健室に向かった。そこには切風と雪愛がいた。
「おっそーーい!何しているのさ。雪愛ちゃんと話している時にケーキ二つも食べちゃったからね!太ったらどうするのよ?」
 切風は自分の歳の半分以下のような発言をした。
「・・・」
 ここは何も言わなかった。そして、雪愛も何も言わなかった。
「すいませーん!」
 優雷はその場で土下座した。もし、優雷がこのような行動取らなければ、この場の雰囲気が最悪であっただろう。
「とにかく早く行こう。」
 偉炎は疲れているからか淡々と話した。
「・・・それもそうだね。よし、一旦学校を出るよ。車に乗って。」
 切風は手をこまねいて三人を誘導した。

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