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羅刹の紅(小説投稿)第七十六話

前回までのあらすじ

町で悪行を繰り返す赤虎組に狙われることになった普通を愛する高校生「最上偉炎」は対抗するために校内に一般部を作った。部内には見た目は子どもであるが途轍もない身体能力と頭脳を持っているが素性が全く分かっていない顧問の「切風叶」と偉炎の親友で馬鹿力を持っている馬鹿である「北条優雷」がいた。そして、同じクラスでありながら不登校になってしまった「今川雪愛」を新たな仲間に入れようとした。雪愛はこの国でトップに君臨している五大財閥のひとつである今川家の令嬢であったが、祖父の謎の死によって財閥の地位をはく奪されている。そんな彼女の依頼として祖父の遺した財宝が眠っている教会を探すことになったが、その財宝にも赤虎組の手は伸びていた。赤虎組が編成した凶悪犯の集団と偉炎、優雷、雪愛は教会でついに衝突してしまい戦いは終盤に突入していた。


青々しく茂げた草が生えている広場は数分も経たないうちにこの町を照らす太陽と赤虎組の敵の血で見事に血塗られた。そして、大人たちがそこには大勢横になったり変な姿勢になったりしてそれこそ悲惨であった。ただ、そんな状況を作り出した高校生三人はさらに広場を赤色に染めなければならなかった。なぜなら、誰かの血で赤色に塗らなければ自身の血で広場の惨劇の一部を演じなければならなくなるからだ。
「左に一人行ったぞ!」
「分かったわ。私が仕留める。」
「右に敵が集中しているから拳銃で何とかする。」
 偉炎たちは声を掛け合いながら人を死傷していった。もうここまで来ると拳銃の件や殺人について隠せるレベルにはなかった。ただ、この場所が町のから離れていたため銃声などは教会にいる人にしか聞こえていなかった。
 連携は素晴らしいものであった、まず近くに来た敵は優雷の一振りで動揺させ、そこに雪愛のナイフが正確に相手の急所を狙う。そして最後に、偉炎の弾丸で確実に戦闘不能にさせていった。お互いがお互いを守っているため誰かがやられることはない、まさに鉄壁であった。
 
 そんなことをしていたら、三人はあっという間に大聖堂に到達してしまった。もし、ここに入ることができれば堂内にある物などを使用して敵の攻撃が防ぎやすくなるだろう。ただ、ここで忘れてはいけない。初めて大聖堂に来た際、雪愛は中から血の匂いがすると言ったのだ。そこからは大体の予想は着く。偉炎はもちろんそこの事を覚えていた。
「これから大聖堂に入るけど、中には恐らく怪我をしている聖職者の人たちがいる!だから、優雷はその人たちを守ってくれ!」
 自身の発する銃声と重ならないように偉炎は優雷に指示した。
「まじでか!?了解だぜ!!」
 優雷は迷わず同意した。
「雪愛は遊撃を頼む!怪我人をかばっている優雷を助けつつ、敵の行動を阻止してほしい。」
「分かったわよ、部長さん。」
 雪愛は乱れていた髪を耳にかけながら偉炎の言うことに従うことにした。
「そして僕は・・・敵を止める!!」
 あれほど人に銃口を向けることを恐れていた偉炎がここに来て攻撃を志願した。もはや、彼の中にはアドレナリンとともに隠し切れない喜の感情が働いているに違いない。ただ、そんなことを考えている余裕もなく三人は大聖堂につっこんだ。
 中はひどい有様であった。祈りをささげる人たちが座る長椅子は跡もなく壊れ、正面のマリア像も心なしかうつろな顔をしていた。柱の一部は損壊し、光を通すガラスは三分の一が割られていた。そして、一番左の側廊には数人が血を流して倒れているのだった。
「やばい!優雷、すぐにあの人たちを介護しろ!」
「え?どうやって?」
「とりあえず楽な姿勢にしてあげて、話せそうな人から医療系のキッドが教会のどこにあるのかを聞くんだ!!」
「分かった。」
「僕と雪愛は戦闘だ!」
 そう言うと、三人はお互いの背中を守ることをやめそれぞれ託された任務を全うしようとした。
「あいつら一旦ばらけたぞ!!一人ずつ殺していけ!!」
「司祭どもをかばいに行ったぞ。こうなったら司祭どもども皆殺しだ!!」
 どうやら財宝の在り方を吐かせるために大聖堂にいた司祭たちはまだ息があった。ただ、ここで赤虎組に従っている凶悪犯は無慈悲にも大聖堂にいる敵を殲滅しにかかったのだ。

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