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羅刹の紅(小説投稿)第八十三話

〇あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校でかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
六月下旬、偉炎と優雷はもう一つの部活であるハンドボール部の大会に出場していた。試合に勝った偉炎たちは応援していた切風と雪愛と合流して居酒屋で食事をするのであった。そこでの話題は七月に行われる体育大会になっていた。
一方、赤虎組は度重なる任務の失敗(主に一般部が原因)のため五大幹部の会議が行われていた。

〇本編

「体育大会!」
「・・・え?」
「体育大会が六月の末にある。おそらく明日のホームルームでどの種目をするのか話し合うと思う。とにかく!みんなと楽しい思い出を作ることは可能だよ!」
 広星高校体育大会。毎年六月末に行われているイベントで三学年がクラスごとに対抗して順位を競い合う大会だ。種目はリレーやらドッチボールやら砲丸投げなど多種多様であることには間違いない。おそらく文化祭に次に盛り上がることのできる青春イベントなのだ。
偉炎は思い出したことをできる限り話して、汚名返上を試みたのだ。そして、それは何とかうまくいったようだ。
「本当に?」
 雪愛が食いついた。
「あぁ、そこでハンドボール部ぐらい、いやそれ以上に楽しいことがある!」
 彼はもうゴリ押しだ。
「・・・それは・・・魅力的だ。」
「よーーーーし!ハンドボール部の大会も楽しみつつ、体育大会も楽しむぞ!」
 優雷が調子の良いことを言った。
「その意気だ!というわけでビールもう一杯!」
 この日のお会計はおよそ一万円、その内四千円が酒代である。そして、それを一人で飲んだ女性は居酒屋で軽く大暴れして問題になったりとかならなかったりとかしたそうだ。

場所は変わる、ここは赤虎組の本営がある屋敷である。偉炎たちがハンドボールの試合があり、居酒屋で楽しんでいるこの日は日曜日ということもあり屋敷の前も人通りも多かった。中には仕事が休みのため家族で歩いている人や恋人と夜の町を楽しんでいる人もいた。そんな中、屋敷の中央では大会議が行われていた。それはもう迫力がすごかった。夜風の心地よさなどお構いなしに会議に参加している六人のメンツには涼しい顔など一つもなかった。
「いやー御影さん、やってしまいましたねー。教会にある今川家の財宝は手に入れることもできずによく分からない連中に惨敗してしまうなんてね!」
 今の発言は草千里燿華である。彼は赤虎組の五大幹部のうちの一人でかつて偉炎と拳銃で戦ったことのある人物だ。
「・・・」
 それに対して同じく五大幹部である御影は何も言わなかった。何も言えない程後悔しているのか、それとも何か言いたいことを我慢しているのか。
「いや、彼は別に悪くはないだろう。なぜなら、教会に向かった連中はあくまで首都にいた囚人どもだ。もし赤虎組の精鋭部隊ならこんなことにはならなかっただろう。」
 今度は別の人物が話した。おそらくこの人物も五大幹部の一人なのだろう。
「いやいやいや、そうはいってもあの囚人どもはあの方からいただいた貴重な戦力だって組長がおっしゃっていただろう。そうだろう、組長?」
 燿華はそう言うと一番奥に座っている人物に目を配らせた。組長と言われた人物は静かに口を開いた。
「・・・我々の目的は町にある財産を手に入れ、首都にいるあの方に献上することです。残り必要な財産を三か月以内に手に入れればいいだけの事です。」
 御影は冷静だった。
「それで?」
「つまりそこまでに手に入れてしまえばたとえ一日前でもいいわけです。捨て駒ならいやほど余っている。」
「それで?」
 組長と呼ばれる人物はただただ計画を聞くだけであった。御影はそれを察して次の作戦を打ち立てた。
「この町には広星高校という場所がある。あの高校は未だに首都にいる五大財閥に反発する非財閥協力の法人だ。もし、彼らの持っている財産を奪っても財閥やその下の組織である警軍も目を瞑るだろう。」
「なるほど。」
 組長は少し納得したそうだ。
「そして、広星高校は少し特殊で財産は全て学校に地下にある貯金部屋に蓄えられている。銀行に預けると財閥に税金という目的で奪われるからという理由らしいです。」
「それを奪うと。」
「・・・はい。高校の全財産がそこにあると言っても過言ではないでしょう。」
「よろしい。」
 組長は即答した。
「では、具体的な検討に入りましょう。」


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