国葬前夜
嵐が去った次の朝。数千年を生きた人類の友は、厩の中で胸を貫かれた状態で発見された。その報せは深い悲しみと共に、一夜にしてスタリア王国全土に知れ渡った‐‐
「まだ空も飛べない幼体だ。さぞかし楽な仕事だったろうな」
その夜の酒場には、踊り子も吟遊詩人も居なかった。客と店主は既に逃げ、静まり返った室内に残るのは、武装した四人の傭兵たちと、彼らに取り囲まれている灰色の髪の男のみだ。
テーブルの上には、賞金首の手配書が置かれていた。
【「灰狼」本名不明。国竜アメスタリア殺しの大罪人。生死問わず】
男は手配書を一瞥した後、表情一つ変えず、冷たい声で言った。
「あり得ん。俺が狩るのは賊竜だけだ」
「ハッ、関係ねえよ、死ね!」
傭兵たちは、一斉に武器を振りあげた。
-
数十分後、人気のない街の高台に一人佇む男の姿があった。彼の髪は赤く、べっとりと濡れていた。
「友よ」
瞳を閉じ、呟く男の足元には、白い花束が置かれていた。
【続く】
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