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ラオス語の ມີ ② -「ມີການ」ってよく使うけど、どゆ意味?

いつも記事を見ていただきありがとうございます。

7月ごろからラオス語の翻訳をやっていましたが、一段落しました。苦労したことや工夫したところなどを備忘録として記録していきたいと思います。ただあまりにも専門的、というかラオス語に関するマニアックな内容ですので、ほとんどの人はなんのことやら意味不明だと思います。。。
もし周りにラオス語について興味のある人がいれば教えてあげてください笑

今日はラオス語の ມີ について書きたいと思います。
前回、ມີ には「所有表現」「存在表現」、2つの使い方があるというお話をしました。詳しくはこちらをチェックしてみてください。

そして、記事の終わりに、悩ましげに、「次回は ມີການ + 動詞 を取り上げます」と告げて締めました。この表現は、考察すればするほど、奥が深い笑
ラオス人に聞いてみても明快な説明が得られず、いつもなんとなく訳していましたが、この機会にあらためて考察したいと思います。
 「ມີການ 動詞」の表現は、大雑把にいうと、そしてそのやり方で基本的には問題ないがゆえに深く考察しないのだろうと思いますが、そのまま「動詞」を訳せば意味の伝達に支障はでません

いくつか例を見ていきましょう。
ຖ້າມີການຊື້ສິນຄ້າ, ຜູ້ຊື້ຕ້ອງຈ່າຍອາກອນມູນຄ່າເພີ່ມ.
「商品を購入する場合、購入者は付加価値税を払わなければならない」
ຂ້ອຍຮູ້ສຶກວ່າກິນເຂົ້າແຊບ ພາຍຫຼັງມີການຢຸດສູບຢາ.
「喫煙を止めた後、ご飯がおいしく感じる」
ນັກຮຽນທີ່ມີການໄປຮຽນຢູ່ຍີ່ປຸ່ນຖືກສົ່ງເສີມໃຫ້ເຮັດວຽກຢູ່ບໍລິສັດຍີ່ປຸ່ນ.
「日本に留学する学生は、日本企業に就職することが奨励されている」
ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ມີການວາງແຜນການເງິນ.
「新しい首相が財務計画を立案する」

上記例から ມີການ を取ってしまっても、いずれも意味するところはほぼほぼ変わらないように感じます。試しに ມີການ を取ってみましょう

ຖ້າຊື້ສິນຄ້າ, ຜູ້ຊື້ຕ້ອງຈ່າຍອາກອນມູນຄ່າເພີ່ມ.
ຂ້ອຍຮູ້ສຶກວ່າກິນເຂົ້າແຊບ ພາຍຫຼັງຢຸດສູບຢາ.
ນັກຮຽນທີ່ໄປຮຽນຢູ່ຍີ່ປຸ່ນຖືກສົ່ງເສີມໃຫ້ເຮັດວຽກຢູ່ບໍລິສັດຍີ່ປຸ່ນ.
ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ວາງແຜນການເງິນ.

伝えている事象は同じように思えます。
ラオス人に ມີການ のある文とない文を比べて意味の違いなど何かありますか、と聞いてみても、だいたい皆「変わらない」と答えるでしょう。
当の本人たちはその有無さえ気づかず話しているかもしれませんが、外国人の私にとっては、とても気になるんですね笑

もう少し正確に言うと、ラオス人も、あらためてしつこく聞かれたのなら、「何かちょっと違うかも」という感じで、もしかしたら何かしら違うのかもしれない、という様子。しかし、言語化するのが難しい

ラオス人でもわからない語感を私が感じ取ることは雲を掴むようなものですが、今後の考察のためにも、今自分がなんとなく持っているイメージを言語化してみようと思います。

まず、文法的に分解すると、ມີການ の ມີ は動詞、ການ~ は ມີ の目的語です。つまり、ມີການຊື້ສິນຄ້າ の目的語は「ການຊື້ສິນຄ້າ」ということになります。一方、ຊື້ສິນຄ້າ の動詞は ຊື້ 、その目的語は「ສິນຄ້າ」です。前者は「商品を買うこと」が目的語である一方、後者は「商品」が目的語というわけです。なるほど、前者の方が目的語の範囲が広く、「買うこと」にも焦点が向いている一方、後者はより限定されて、「商品」に焦点が向いている印象です。

次に、ມີ の用法です。前回、ມີ ~ には「所有表現」に加えて「存在表現」としても使えるというお話をしました。存在表現の場合、日本語では「~を持つ」ではなく、「~がある」と言います。「持つ」と言うと、所有者が明確に意識されますが、存在表現において所有者は主役ではありません。何かの物事が「ある」という情報がメインなわけです。
ມີການ の場合、私は、「ある動作の存在を表現している」のではないかなと考えました。なので、ມີການຊື້ສິນຄ້າ は「商品を買うことが存在する」というイメージです。このイメージでは、「買うこと」の所有者は主役ではありません。それに対して、ຊື້ສິນຄ້າ は「(~が)商品を買う」という一般の動作であり、動作主は誰?という関心が高い。少なくとも ມີການຊື້ よりは高い、のではないかと考えました。

この考察が的を射ているとすれば、ມີການ を使うことで次のようなニュアンスを含むことができるのではないでしょうか。
・動作主への関心を弱め、動作が発生することに注意・関心を向けさせる
・動作主への関心が弱まるため、抽象的な表現、曖昧な表現、一般化するときの表現などに使うことができる

ຖ້າມີການຊື້ສິນຄ້າ, ຜູ້ຊື້ຕ້ອງຈ່າຍອາກອນມູນຄ່າເພີ່ມ.
「商品を購入する場合、購入者は付加価値税を払わなければならない」

この文を例にすると、「購入」という動作が生じることに注目を向けたいわけで、商品の購入者が誰かということはそこまで重要ではない、と考えます。ຖ້າຊື້ສິນຄ້າ と言ってもいいのですが、この場合、発話者は強く意識していなかもしれませんが、話題の中心がより個別のケースにおける具体的な購入者に向いているのではないか、と感じました。

最後に、ມີການ について考えていたときに少し横道に逸れてしまったときの考察を紹介して締めくくりたいと思います。先ほど提示した「新しい首相が財務計画を立案する」の例文を用いて、動詞「立案する」の時制その動作主の具体性について考えてみました。
1.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ຈະມີການວາງແຜນການເງິນ.
まだ立案しておらず、立案することも確定ではないが、予定している
2.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ຈະໄດ້ມີການວາງແຜນການເງິນ.
意味は「1」と同じだが、予定の実現に特別な感情(早く立案したい、したくないなど)を持っている。
3.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ມີການຈະວາງແຜນການເງິນ.
既に立案することは確定しているが、まだ立案はしていない。
4.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ມີການຈະໄດ້ວາງແຜນການເງິນ.
意味は「4」と同じだが、立案することに対し特別な感情を持っている。
5.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ໄດ້ມີການວາງແຜນການເງິນ.
既に立案した。
6.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ມີການໄດ້ວາງແຜນການເງິນ.
「5」と同じ意味だが、立案が完了したことを強めている。
7.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ມີການວາງແຜນການເງິນ.
文字どおり解釈すると、既に立案したように感じるが、この書き方は時制の要素(ຈະ、ຈະໄດ້、ໄດ້など)がない分、これから立案するときにも使えるのではないか。
(以下は ມີການ を取った言い方)
8.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ໄດ້ວາງແຜນການເງິນ.
立案した。
9.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ຈະວາງແຜນການເງິນ.
これから立案する。
10.ນາຍົກລັດຖະມົນຕີໃໝ່ຈະໄດ້ວາງແຜນການເງິນ.
これから立案する。立案することに特別な感情を持っている。

1~7について、つまり ມີການ を用いた言い方では、立案する動作主が誰なのかは必ずしも明白ではないように思います。首相が立案するのかもしれないし、他の大臣に立案させるのかもしれません。
一方、8~10についての動作主は「首相」です。本当に首相が立案するかどうかは別として、少なくとも言いぶりからはそう解釈できます。

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。1~7までの考察は、あくまで現時点での私のもやもやをなんとか言語化した結果であり、多分に実態とは異なることもあろうかと思います。

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