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ラオス語の ມີ ① - 「持つ」それとも「ある」?


いつも記事を見ていただきありがとうございます。

7月ごろからラオス語の翻訳をやっていましたが、一段落しました。苦労したことや工夫したところなどを備忘録として記録していきたいと思います。ただあまりにも専門的、というかラオス語に関するマニアックな内容ですので、ほとんどの人はなんのことやら意味不明だと思います。。。
もし周りにラオス語について興味のある人がいれば教えてあげてください笑

今日はラオス語の ມີ について書きたいと思います。
ມີ は「持つ」という動詞です。ມີເງິນ といえば「お金を持っている」となります。なんでもかんでも持っていれば「ມີ ~」と言うだけです。とても簡単かつ使い勝手のいい動詞です。

しかし、公的文書や報告書などで使われると、たちまち翻訳者を悩ませるのです。セオリーどおり「~を持つ」と訳すと、なんだか変な日本語になってしまうからです。例えばこんな表現があります。

ມີລາຍຮັບ「売り上げを持つ」
ມີຄວາມສຸກ「嬉しさを持つ」

上記はどちらも直訳したものですが、意味はわかるものの、ぎこちなく、「売上がある」、「嬉しい」あたりが無難です。

この例からもわかるように、ラオス語の ມີ は行為として明確な「所有、所持」を表すのみならず、物理的なものや属性・感覚が「存在」していることを表すときにも使います。

ມີ + A という文を見たときに、所有表現の「Aを持つ」としがちですが、存在表現の「Aがある/いる」と訳すこともできます。どちらかの訳でしっくりこないときは、もう一方の訳も試してみると、適当な訳が見つかる手がかりになるかもしれません。

それでは、いくつか例を紹介しましょう。
1.ມີຄວາມຮັບຜິດຊອບ
ຄວາມຮັບຜິດຊອບ は「責任」です。「責任がある」と言うこともできますし、「責任を持つ」でも文脈によっては自然ですね。「持つ」だと少しカジュアル過ぎる場合は「有する」を当てると訳が引き締まります。

2.ມີສິດ
ສິດは「権利」です。こちらも、「権利がある」または「権利を有する」どちらの言い方もできますね。

3.ຕ້ອງມີໃບອະນຸຍາດ ໃນເວລາຈະເລີ່ມທຸລະກິດ
ໃບອະນຸຍາດは「許可書」です。「許可書がなければならない」、「許可書を持っていなければならない」としても意味は分かりますし、変ということもありません。ただ、ຕ້ອງມີ ~ の形の場合、文脈によりますが、所有/存在に至る動作を当てるのもいいかもしれません。例の場合だと、「許可書を取得しなければならない」とするのも一案ではないでしょうか。

4.ມີແຕ່ ~
こちらはおまけです。「~しかない、あるのは~だけ」という言い方です。例えば、ບໍ່ມີເງິນ. ມີແຕ່ໜີ້. と言えば「お金はない、あるのは借金だけ」という意味になります。
ມີແຕ່ に動詞を付けると「~しかしていない、~しているだけ」という意味になります。例えば、ບໍ່ໄດ້ເຮັດຫຍັງ. ມີແຕ່ເບິ່ງໜັງ. といえば「何もしていない。映画を見ているだけ」となります。

おまけのおまけ
日本語では「お金がある」と言えば、文として成立します。所有者は誰か分かりませんが、でも文としては完全な状態です。英語だと、have money と言いたいところですが、文の完全性が欠如しています。have を使う以上、I have money のように所有者を登場させなければなりません。 所有者お呼びでない場合は、There is money. という別の言い方になります。
ラオス語ではどうでしょうか。ラオス語で「お金がある」と言いたければ、ມີເງິນ でいいそうです。公式文書にも使えるほどの文法的完全性が備わっているかどうかは定かではありませんが、少なくとも普段の会話で ມີເງິນ と言えば、所有者が登場しなくてもいい「お金がある」に相当するようです。これは、日本人にはありがたいですね笑

さて、いくつか ມີ の用法について紹介してきましたが、もう一つ、悩ましい表現があります。それは、「ມີການ + 動詞」という表現です。こちらは、考察が長くなりそうなので、次回詳しく取り上げたいと思います。

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