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所沢の社会実験 TOKOROZAWA STREET PLACE 2022|Memo

2022年11月19日「TOKOROZAWA STREET PLACE 2022」という社会実験にスタッフ参加して来ました。マンション開発が進むエリアの足元で実施された社会実験ながら、所沢駅周辺の開発に伴う街並みの変化や近年の暮らしの価値観の多様化などに対応しつつ、エリアのポテンシャルを刺激する「プレイスメイキング」。これまであまり意識しなかった所沢ですが、袖すりあうも他生の縁。個人的な目線で恐縮ですが、ちょっとまとめておきます。

[TOKOROZAWA STREET PLACE 2022]
所沢の旧町エリアにある2つの「プレイス」をつなぐ小さなマーケットです。所沢のまちなかに滞在できるパブリック空間を。銀座通り沿いにある秋田家住宅と銀座中央広場の2か所で同時開催。
本取り組みは、昨年度策定された「所沢駅周辺グランドデザイン」で見出された"プレイス"を使い、回遊導線を結んでいき、歩きたくなる旧町地区を目指していきます。
居心地の良い空間と、所沢のローカルが集まる2日間。
日時:2022年11月19日(土)・20日(日)
時間:10:00-16:00 小雨決行・荒天中止
会場:秋田家住宅、銀座中央広場
主催:所沢市街づくり計画部 都市計画課
企画運営:RFA(Ryuji Fujimura Architects)、株式会社オープン・エー(公共R不動産)、有限会社ハートビートプラン
協力:暮らすトコロマーケット実行委員会 彩の国マルシェ SAVE AREA(わいわいリサイクル)

TOKOROZAWA STREET PLACE より

縁はあったがあまり意識しなかった所沢

自分の所沢に対する印象は、ほぼほぼ入間に住んでいた子どもの頃に形成されたもので、端的に言えば「縁はあったがあまり意識しなかった」エリアです。

子どもの頃は休日に家族で、小手指の西友、西武球場や西武遊園地、ユネスコ村、狭山湖・多摩湖、航空公園など車で出かけてはいたので、市域の西側に偏りはありますが縁がなかったわけではありません。もちろん西武の本拠地という認識もありました。
ただ電車で移動する時も、行き先は主に池袋で、所沢駅はその間に通過する駅のひとつという認識でした。西所沢駅で乗り換えることはあっても、所沢駅で下車した記憶はありません。その後、中学校の途中で入間を離れ、小川町へ引っ越しをしてしまったので、しばらく所沢を意識することはありませんでした。

次に所沢を意識したのは社会人になる直前でした。前職の再開発コンサルティング会社が支援した市街地再開発事業が所沢駅前にあり、面談前か入社前に見ておこうと足を運んだのでした。まだ専門家の視座を獲得する前で、リサーチ不十分なまま現地を見て終えてしまっており、いま思うと少し恥ずかしいくらいです。
所沢の市街地形成の歴史的経緯やかつての中心である元町の存在も、市街地を囲んで農地風景や丘陵地帯が広がる緑豊かな郊外立地であることも、なんの認識もないまま駅を降り、周辺を少し巡って掴みどころなく帰ったのでした。駅前の集積だけを見ても印象に残りにくい場所だったとも言えますが、分かった気にならなかったのが救いではあります。

人の手により作られてきた緑豊かな郊外

自分にとっては「縁はあったがあまり意識しなかった」所沢ですが、少し調べてみると、市街地には歴史ある旧町の名残があったり、周辺には開拓された農業地帯や雑木林が広がるなど、江戸期から人の手により作られてきた緑豊かな郊外都市でした。

所沢駅周辺は、再開発等により道路や商業施設などが整備され、プロペ通りは若者の甘酸っぱい思い出の地として賑わい、いくつかの点的な再開発はその後もあったようですが、駅を中心としたまちそのものは近年になってからのようです。
新駅舎工事や駅ビルの整備を進めたり、車両工場跡地における開発計画を進めるなど、少しずつ西武の投資による機能更新が進んできています。

ワルツは「ウィーンのようなイメージをもつ街になって」という期待を担った名称

所沢のまちの中心軸は、もともとは駅前ではなく元町エリアにあり、江戸期には街道の中継地として木綿等の取引盛んな交易拠点でした。川越の次くらいに栄えた街であったと言います。
その頃の名残りとして、古い建物や蔵づくりが点在していますが、都市化の圧力と老朽化の進捗もあり、その数はだいぶ少なくなっています。歴史性や景観に配慮してか低層階に瓦屋根があしらわれた複合ビルがいくつかありましたが、地域の方がこれを受け入れていらっしゃるのか、ちょっと分かりません。

タワマン通りになっているファルマン通り

江戸期には新田開拓も進められ、その独特な農地風景が市街地の北側に広がっています。短冊状に地割りされ、雑木林の落ち葉を堆肥に腐葉土をつくる循環式農業が続けられて来ました。
市街地を中心に置くと、北には新田地帯、南西には狭山湖や雑木林などの丘陵地帯、中心部にも航空公園などの公園緑地があり、所沢は、人の手を入れて歴史的に作られてきた緑豊かな郊外エリアであることに気づきます。

暮らしを豊かにするローカルコンテンツがまだまだあるのかもしれない

TOKOROZAWA STREET PLACE 2022

11/19「TOKOROZAWA STREET PLACE 2022」という社会実験にスタッフ参加することをきっかけに、所沢を訪れることとなりました。11/19と20の2日間あるうちの初日。

社会実験の実施ポイントはタワーマンションが建ち並ぶ通りの足元、秋田家住宅と銀座中央広場の2カ所です。主に広場が自分の持ち場。南北に細長く少し傾斜のある広場に、ローカルから地道に集めた出店を並べ、ハンモックやエアソファを置き、どんな人がどのように過ごしたかを調査しました。

社会実験会場のひとつ銀座中央広場には開始早々に人が訪れ始める
登録有形文化財「秋田家住宅」も社会実験の会場として活用

2カ所の会場と同じファルマン通り沿いには、数カ所セットバックしたオープンスペースがありしたが、日中ほぼ日陰になってしまっていました。そんな中でこの中央広場は日当たりが良く、朝は少し肌寒かったものの、昼以降は上着を脱ぐくらいの晴天に恵まれました。

ローカルコンテンツを加えた「まちの余白」のチカラ

この土日は、航空公園の「暮らすトコロマーケット」や線路沿いの「KAWAYA市」が同日開催され、社会実験「TOKOROZAWA STREET PLACE 2022」のパンフレットやSNSでは、それらを繋いだお勧め散策コースを記載し発信しています。片道徒歩約20分と近くはないながら、パンフレットを片手に行き来する人も見られ、中には子ども連れで往復する方も。道の歩きやすさを示しているのかもしれません。

またこの広場は通学路や散歩コースなど生活動線上に位置していたようで、近所に住むファミリーや夫婦が徒歩や自転車で立ち寄っていました。小型犬を連れて散歩をする人もよく見かけましたね。中型犬を見たのは1回だけでした。総じて振り返ると、広場の北側と南側で、来る人の属性が違っていた印象を受けました。

かつて賑わったボロ市を現代版にリニューアルした「暮らすトコロマーケット」
トイレ愛の強い設備屋さんによるインフラスタンドで「KAWAYA市」

現地に来る前は正直、マンション開発が進んでしまった難しいエリアの足元にある中途半端な空き地という先入観を持っていました。しかし一日を通して、広場に置いたハンモックやエアソファで遊ぶ姿や、出店をめぐり会話や食事を楽しむ姿を眺め、その先入観は崩れはじめました。

子どもたちが寄ってくるカラフルなエアソファ。なかなか離れようとしません笑

通学路や生活動線上にあり、整備されすぎていない南北に細長く少し傾斜のある空間の特性を活かす。そして目利きと行動力により集められたローカルコンテンツが加わることで、ちょっといい感じの近所暮らしが感じられる場所になる。広場がまちの余白っぷりを存分に発揮しているように見え、それはそれはとても不思議な体感でした。

付記:広場に生まれた音の結界(サウンドインスタレーション)

もうひとつ、この社会実験で体感したサウンドインスタレーション。それはさながら音の結界でした。航空公園でサンプリングした音を使って制作した環境音楽を、ハンモックやエアソファを囲んだスピーカーから流すという作品。この結界の中にいると、まちの喧騒が遠のき風や木々の音が強まる感覚を覚え、広場の高台に立つ大きな樹木がシンボリックに輝き始めたようにさえ思えました。

今回の社会実験を踏まえ、今後もプレイスメイキングは進んでいくようです。会場の様子がわかる素敵な写真は、TOKOROZAWA STREET PLACE 公式アカウントでご覧になれます。

以上、忘れないうちに書きまとめた、社会実験「TOKOROZAWA STREET PLACE 2022」の初日11/19に参加して得た個人的所感でした。

付記2:真剣に設営準備するスタッフの様子

リサーチの合間に、ハンモックの使い心地を確認したり、エアソファの空気補充を行っている様子が、写真と動画でしっかり記録されておりました。
リサーチスタッフとして身をもって真剣に入念に臨んだ証拠としてアップしておこうと思います。

使い心地はとても快適でございました。笑


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