百合小説感想

「百合小説コレクションwiz」(河出文庫)というのが一年ちょっと前に発売されて、その頃購入したのだが、ほとんど手つかずだった。なんとなく、渋とかに投稿されている玉石混淆の延長みたいなものだと思っていたからかもしれない。百合創作がそもそも誰をメインターゲットにしているかは、各自ご承知かと思うが、「コミック百合姫」にもあるように、舞台設定は現代ものから異世界、ファンタジーものまで色々ある。百合を真に愛好する人々はどんな設定の話にも百合表現を発見し愛好するものだろうし、お話に様々なバリエーションがあることも先刻ご承知であろう。私は現代学園ものしかないとしても、話は無数にできると思っているので、困ることはない。
さて、上記文庫をなんとなく開いてみた。巻頭作品の「選挙に絶対行きたくない家のソファで食べて寝て映画観たい」という短編は、読むのが二度目であるが、極めてまともで、とても良い。続いて他の短編群も読んでみたが、まあ漫画チックというか、でも漫画で表現されたとしてもそんなに好みではないだろうな~と思う感じの作品であった。漫画に適しているのなら最初から原作付きで百合姫にでも載ってもおかしくないかもしれない。
渋では「創作百合」を掲げて、色々とどぎつい画風というか芸風の漫画を発表するクリエイターがいて、作品の中で言いたいことは分かるけれど、だから何? と問い返したいことはたまにある。恐らくそういう作品はメインターゲットたちの心理をよく知悉していて、ウケると見込まれるからこそ続いているのは確かだろう。ステレオタイプだとしても、継続することで読者との間に一種の了解ができることもある。
いずれにせよ、雑誌でもネットでも、「下手な鉄砲」的に矢継ぎ早に新作を発表しないとすぐに行き詰まる状況ではあると思う。一旦何らかのはずみで大きく爆発炎上したならば、そのコンテンツから1円でも多く果実を採集するべく、メディア展開とかテコ入れとかして稼ぐのが出版社の仕事である。ただ、人気の作品というのは結局、読者集団の好みを映す鏡であり、漫画がつまらないのも読者の責任に帰すほかはないであろう。

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