「天気の子」Blu-ray+絵コンテ+美術画集を買った
ここでいう5/27日とは2020年5月27日のことである。当時ちょうど都合よく配られた10万円はありがたく経済を回すのに使われたのだが、その結果手元にやってきたのが以下である。
・「天気の子」Blu-rayBox 初回限定版特典付き
・本編ディスク+特典ディスク3枚+本編4K Ultra HD版ディスク(計5枚)
・冊子(インタビュー、設定画、Q&Aその他)
・縮刷台本
・美術画集
・絵コンテ
これらを手に入れ、内容を一通り楽しんだところで何か記事でも書くかと思っていたのだが、
などと書かれた下書きが発掘された。これらは購入当時にどうしても書き残しておく必要があるということで勢いよく書いたまま、放置されて2年以上が経過したものである。その間に「すずめの戸締まり」は無事公開日を迎えようとしており(注:迎えた)、ここで世に出さなければ当該記事は永久に下書きの肥やしとなる他なくなるため、このようにして送り出している次第だ。
さて、今更「天気の子」についていったいどんな話をしようというのか。
改めて購入した物品を確認していこう
・Blu-rayBox
ブックレットにはキービジュアルやポスター、設定画、キャスト/スタッフインタビュー・監督Q&Aその他が収録されている。
・特典ディスク
めちゃくちゃに量が多い。2年も経ってこんな記事を書いてはいるが未だに全部には目を通してない。ビデオコンテはちゃんと見たのでその話は出てくるかもしれない。
・絵コンテ
あとで出てくる
・美術画集
今回はあまり触れないがめちゃくちゃ良い
以上の品を揃えたところで改めてじっくりと本編を視聴し、絵コンテをめくったりビデオコンテを眺めたり、また本編で気になったところをコマ送り何度も見るなどしていたのだが、そうすると様々な発見があったので本記事ではそれらの話をしていく。
注:以降、本記事における本編映像のキャプチャは画面をスマホの直撮りで行ったものである。本編ディスク映像でやるのが本来の趣旨に合ってはいるのだが、先日追加されたAmazon Prime Videoの方で撮るほうが楽だったので一部そのようにしております…
まずはいきなりだがこちらのシーンをご覧いただきたい。
動画引用
本編開始24分あたりのシーンである。
帆高と陽菜の2人がビル屋上に初めてやってきて、カメラが2人を中心に180度反転しながら2人は後ろを振り返る、というなんてことのないシーンである。
なんてことのないシーンなのだが、2人が振り返るところをよーーーーく確認していただきたいのである。なんだか奇妙なことが起こってはいないだろうか?
2人の位置関係をよーーく見ていただきたい。
さて、最初の二人の位置と見比べていただきたい。
2人の立ち位置が入れ替わっているのだ。(入れ替わってる~!?)
また、途中の経過も確認していただきたい。
帆高は一歩前→左回りに振り返りながら陽菜の右側に向かって移動→一歩前に出て最初陽菜がいた場所に
陽菜は振り返りながら右に移動→最初帆高がいた場所に
これらの移動を、違和感が出ないように足元の距離感をうまく合わせるなどして行っているわけである。この一瞬のためにしてはずいぶんと手が込んでいるとは思われないだろうか???
当時私は当該シーンをコマ送りで眺めていたのだが、3回目くらいに「何かおかしいぞ?」と思ってよく見てみると、なにやら奇妙な動きをしているではないかということに気づいたのであった。そして、ひとしきり理由を考えた後、絵コンテを紐解けばなんでこんなことになっているのか分かるのでは!?という閃きを得たのであった。
ということでなぜこのような奇妙な動きが間に挟まっているのかの答え合わせをしていこう。
こちらが絵コンテの当該ページである。順番に見ていく。
引用おわり
お分かりいただけただろうか???
3枚目と4枚目で、2人の立ち位置が同じに書かれているのが分かるだろう。だがカメラが180度反転したうえで、カメラからの位置が同じということは、2人の実際の立ち位置はこの一瞬で入れ替わっているはずなのだ。つまりこの絵コンテのままでは映像として繋げることはできないのである。
さて、Blu-ray Boxにはビデオコンテも収録されている。絵コンテを繋げて映像にしたものなのだが、当該部分はというと内容的には絵コンテそのままであることが確認できた。そしてそれを見る限り、流して見る分にはちゃんと繋がってるように見えるのだ!
さて、絵コンテの3枚目には赤字で「ホダカ、おどろきつつ動いて立ち位置 ヒナの左へ」とメモが加えられているのが分かるだろう。また、頭の上の矢印とともに黒で「その場で回転」とあるのを見ていただきたい。これも赤で矢印が付け加えられ、その場を動くように修正されている。これらの赤字は助監督・三木陽子によるメモ書きとのことである。絵コンテを実際に映像に落とし込んでいく段階で考慮されたものであろう。
ここまでを踏まえれば、真相が見えてくるであろう。
絵コンテの後の段階で、「実は前後が繋がってなかった」というのが判明し、絵コンテを変えることなくどうにか間を繋ぐことになったため、位置関係を入れ替える動きが途中に挟まることになった、というのがかの位置の入れ替わりに関する私の見立てである。
「なんか奇妙なことが起こってる!?」という小さな疑問から始まった謎であるが、スッキリした答えが用意されていたことに私は感動したのだが、いかがであろうか?
いや細かすぎるし割とどうでもいいって?それはそう。確かにそう。
さて、本記事はまだ続く。以下は別の話題である。なにも私は死ぬほど細かい、半ば粗探しにも近いことをするためだけに一時停止を駆使しながら本編を見ていたわけではなく、じっくり見ないと気付かないような細かい表現というものをきちんと確認していく作業も行っていたわけである。ということでここからはそれらを紹介していくことにする。
いきなりだがここでクイズだ。
Q. この場所はどこ?
A. この部屋の真ん中あたり
奥の非常口の位置などから判別できるであろう。
先の画像は夏美が高校生のころ、須賀、明日花、萌花の3人を写真に撮った際の回想である。後ろの花などは新しい事務所の祝いの品であると分かるだろう。
さて、クイズという形を取ったが、答えがこの場所なのを意外に思われた方もおられるのではないだろうか?
ちなみに反対側はこのようになっている。
これが絵コンテだとこのようになっている。
絵コンテの段階では窓にK&Aと書かれており、この場所がどこであるかがある程度把握できるようになっているが、本編ではそれらの手がかりがほとんどないのが分かるだろう。個人的には、漠然と「なんか小奇麗な感じのする全然別の場所かな?」くらいのつもりでいたため、後からきちんと確認してみて意外に思ったポイントである。
「天気の子」という作品には、情報を出す順番の関係上初見では把握できない描写などが含まれているのだが、その一つが上記である。
つまり、「帆高がやってきた事務所は実は、数年前まで須賀、明日花、萌花が3人で暮らしていたまさにその場所に他ならない」ということなのだが、そのことは本編できちんと明示されるより前から一貫して描写されているのだ。ということでそれらを拾っていきたいと思う。
手前に三輪車が映っているが萌花のものであろう。
「須賀の娘・萌花ちゃんの背が届くところにはシールを貼っています」(美術画集 p116
奥の壁に絵が描いてあるのも同様であろう。
トイレの壁面にはひらがな表が貼ってある。
須賀の自室。2枚目の左に写っている写真は本記事で先に取り上げた、夏美の撮影による家族写真である。祭と書かれたうちわはおそらく写真にある花火大会のものであろう。その他、男の一人部屋にはおよそ似つかわしくないものはみな家族の品であると分かるだろう。
ちなみに1枚目右側には新聞の切り抜きらしきものが貼ってあり、雲の写真とともに「謎の生物」と書かれている。
といった具合にかなりいろいろと細かく生活の痕跡などが作りこまれているのだが、これらは序盤の何気ないシーンであるため、なかなか気づくのは難しいであろう。
さて、本編において、須賀の家族に関する事情が明らかになったうえでの描写も取り上げてみるとする。
冷蔵庫には当時の書置きがそのままの状態で残されている。須賀にとってこの部屋の時間は止まったままなのだということが、物語も佳境に差し掛かったところでようやく明示される。
ここまで来れば、見た全員がおそらく事情を把握するであろうと想定されているのだと思うが、当時の感覚でいうと「え、こんなものがここにあるの?」という唐突感の方が大きかったと記憶している。また知り合いに尋ねてみた限りでも、ここまでに述べたような諸々の設定についてははっきりとは認識していなかったとの証言もある。みなさんはいかがだっただろうか。
ということで本編の様々な描写を拾ってみた本記事も締めくくりである。「天気の子」という作品は実に細かいところまで情報が詰められていたので、それらをつぶさに紐解いていく作業もきちんとした手ごたえがあるように感じられた。本作にはまだ拾ってない情報が何かあるかもしれないと思っているが私はここまでにするとする。(実在の場所をどのように移動したかなども極めて細かく作られているということも把握しているが、面倒なのでやらない)
本記事は以上だ。
おまけ
夏美がバイトしてるキャバクラで酔い潰れる須賀を迎えに来る帆高ってどういうシチュエーションなんだろうか
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?