黄帝内経素問集注(金匱真言論篇4-3)

翻訳

帝(黄帝)は言いました。「五臓は四季に応じて変化し、それぞれが受け取るものですね。」
(帝とは黄帝のことであり、五臓とは人間の五臓(心臓、肺臓、脾臓、肝臓、腎臓)を指します。これらの五臓も天の陰陽と四季の気に応じて変化し、五方の気色(東方・南方・西方・北方・中央)を受け取ることができるのですね。四季の陰陽の変化を受け入れることができるのです。)

岐伯が答えました。あります。東方は青色で、肝と通じ、目の竅(穴)を開き、肝に精気を貯蔵します。
(天の五つの方位の気色が五臓と通じ、五臓の精気を養い、肝の精気は目の竅を開き、また天の気色とも相通します。これは天の気が人に通じ、人の気が天に通ずることを意味します。肝の陰精は自身の臓に貯蔵されているということです。『本神篇』に曰く、『五臓は精気を主とします』とあります。)

この病気は驚き恐れを発します。
(春の時期に陽気が上昇するため、この病気も気の震えのように驚きや恐れを引き起こすのです。)

味は酸であり、性質は草木です。
(木は曲がったり直線的な成長をすることから、それによって酸味が生じます。肝は木に属し、地の草木と同じ類に属します。)

畜える動物は鶏です。
(易経によれば、巽(すん)は鶏を象徴します。東方は木に属しますので、鶏が適しています。)

栽培する穀物は麦です。
(麦は五穀の中でも優れたものとされ、したがって東方に相応します。)

これらは四季に応じるようです。上には歳星
(歳星は木の精気です。十二年で一周します。地の草木と谷畜が天の四季に応じ、上には歳星があります。)

このため、春の気は頭に現れます。
(春の気が上昇すると春風が吹き、春の病気は頭部に現れるのです。これは同じ気に感応し合うからです。他の臓器が気の虚によって病気になるのとは異なり、したがって春の気が頭部にあるとはっきり述べられますが、病気の名は出てきません。)

音は角(かく)です。
(角は木の音です。これは春に応じる音です。)

数は八です。
(これは木の成数です。)

このため、病気は筋にあることを知ります。
(肝が筋を主宰するため、病気は筋に起こります。五音五数は天の気に応じるものです。皮肉筋骨は地の有形なるものに応じます。天の応と病気の有形なる筋骨とは、天の陽気が五臓の陰気を通じることによって起こります。したがって、東方の意味は、下の文と少し違いがありますが、天地の陰陽の気が互いに交感し合うということを示しています。下の四方とは、天の気色が臓に通じ、五臓の気に病気が現れることを言い、地の五味五行、五穀五畜は皮肉脈骨の有形なるものに応じるという意味です。これらはすべて陰陽の変化の法則に従ったものです。)

臭いは臊(そう)です。
(臊は「騒」と発音します。臭い、つまり気です。気が木に変化すると臊となります。『月令』には「臊」と書かれていますが、同じ意味です。)

南方は赤色で、心と通じ、耳の竅を開き、心に精気を貯蔵します。
(心は火に属し、南方の赤色を受け取り、心に通じて内部で精気を養います。『邪氣臟腑篇』には、十二経絡、365本の絡脈が全て面から上に走り、空竅に至ります。また、独自の気が耳を通って聴覚を形成します。この独自の気は心を主とします。この篇では心の気が耳の竅を開き、腎の気が二陰(腎臓の2つの穴)を開くと述べられています。これは五臓の気が九竅(9つの穴)を通じ、九竅と五臓が全て天の気と通じることを意味します。)

それゆえ、病気は五臓にあります。
(五臓は病気の起こる五臓の気のことを指します。前述のように、夏の気による病気は臟(内臓)に現れます。五臓六腑は心が主宰するため、心の気の病気は五臓の気に影響します。故とは、天の気色が臟に通じ、病気もまた気に起因するということを意味します。)

味は苦く、性質は火です。
(火が上昇すると苦味が生じます。心の気は南方と通じるため、五行の火と同じ性質です。)

畜える動物は羊です。
(『五常政大論』によれば、馬を畜えることもありますが、午と未はいずれも火に属します。)

栽培する穀物は黍(きび)です。
(黍は糯性の小麦で、温かくて赤色をしています。したがって、心に相応する谷物となります。)

これらは四季に応じるようです。上には熒惑星
(熒惑星は火の精気です。740日で一周します。)

このため、病気は脈にあることを知ります。
(心が脈を主宰するため、病気は脈に起こります。脈は地の五味五行に応じるとされ、羊や黍谷との関連によって脈の病気を理解します。)

その音は「徵」です。
(火の音です。その応じる感情は「憂(うれい)」にあります。)

その数は七です。
(火の成数です。)

その臭いは焦げ臭いです。
(気が火によって変化すると焦げ臭くなります。)

原文

帝曰:五臟應四時。各有收受乎。
(帝言人之五臟。應天之陰陽四時。而五臟亦能收五方之氣色。受四時之陰陽乎。)

岐伯曰:有。東方青色。入通於肝。開竅於目。藏精於肝。
(天之五方氣色。入通於臟。以養五臟之精。肝之精氣。開竅於目。而複通乎天氣。是天氣通乎人。而人氣通乎天也。其陰精藏於本臟。本神篇曰:五臟主藏精者也。)

其病發驚駭。
(春時陽氣上升。故其病亦如氣之震發而為驚駭也。)

其味酸。其類草木。
(木曰曲直。曲直作酸。肝屬木。與地之草木同類。)

其畜雞。
(易曰:巽為雞。東方木畜也。)

其谷麥。
(麥為五穀之長。故東方應之。)

其應四時。上為歲星。
(木之精氣上為歲星。十二年一周天。以地之草木谷畜。應天之四時。上而為歲星也。)

是以春氣在頭也。
(春氣上升。春風在上。春病在頭者。同氣相感也。與別臟之因氣虛而病者不同。故曰春氣在頭而不言病。)

其音角。
(木音也。其應在春。)

其數八。
(木之成數也。)

是以知病之在筋也。
(肝主筋。故病在筋。夫五音五數。應天之氣也。皮肉筋骨。應地之有形也。以天之應。而病有形之筋骨者。天之陽氣。通乎五臟之陰也。是以東方文義。與下文少有差別者。言天地陰陽之氣。互相交感也。其下四方。言天之氣色。通乎臟而病五臟之氣。地之五味五行。五穀五畜。以應皮肉脈骨之有形。此皆陰陽變換之道。)

其臭臊。
(臊音騷。臭、氣也。氣因木變則為臊。月令作 。 與臊同。)

南方赤色。入通於心。開竅於耳。藏精於心。
(心屬火。受南方之赤色。入通於心。而養精於內也。邪氣臟腑篇曰:十二經脈。三百六十五絡。其氣血皆上於面而走空竅。其別氣走於耳而為聽。別氣者。心主之氣也。此篇以心氣開竅於耳。腎氣開竅於二陰者。謂五臟之氣通于九竅。九竅五臟。皆通乎天氣也。)

故病在五臟。
(五臟者。病五臟之氣也。上文曰:夏氣者。病在臟。五臟六腑。心為之主。故心氣病而及于五臟之氣也。曰故者。言天之氣色通於臟。而為病亦在氣也。)

其味苦。其類火。
(炎上作苦。火之味也。心氣通於南方。故與五行之火同類。)

其畜羊。
(五常政大論曰:其畜馬。蓋以午未皆屬火也。)

其谷黍。
(黍、糯小米也。性溫而赤色。故為心之谷。)

其應四時。上為熒惑星。
(其應天之四時。而上為熒惑。熒惑、火之精也。七百四十日一周天。)

是以知病之在脈也。
(心主脈。故病在脈。脈以應地。曰是以者。以地之五味五行。羊畜黍谷。以應病之在脈也。)

其音徵。
(火音也。其應在憂。)

其數七。
(火之成數也。)

其臭焦。
(氣因火變則為焦)


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