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弟の日記⑤緊張腹痛狼狽好調説

私は物凄く緊張しいである。

五厘のバリカンが友達だったころの丸坊主時代、(野球部員の言い換え)幸いにもレギュラーとして試合に出させてもらっていたが、試合前は必ず腹を壊していた。

特に、次の回の攻撃、自分の打席から始まる時は最高潮の腹痛が私を襲う。

スリーアウトチェンジで、守備からベンチに戻り監督の前に集まるのだが、私は最高齢の監督を無視してトイレに駆け込む。
監督のありがたい話を聞いていたら、先頭打者の私は、打席で目も当てられない状態になるだろう。(1番距離が近い相手のキャッチャーに大謝罪する事になる)

嵐のようにトイレに駆け込み、汗だくでもどってくる私の姿を、チームメイトは「下痢ら豪雨」と呼んでいた。(お食事中の方がいたら申し訳ない)

ここまでだと悲しきあだ名の男の話だが、タイトルにもある通り、「緊張して、腹を壊して、狼狽している」この状態が私の中で最高潮なのだ。
シャツもベルトから溢れ、バッティンググローブすらはめる時間もなく慌ただしく打席に立ち、打つのである。高い確率でヒットを打つのである。
(後から聞いた話だが、チームメイトも「下痢ら豪雨だから、あいつ打つぜ」とベンチで話していたらしい)

本人も仕組みは分かっていない。

ヒットを打ってベースの上で澄まし顔をしているが、内心、自分の滅茶苦茶さに対応できていない。

この経験を何度もしてから、私は一つの仮説を立てた。

それが「緊張腹痛狼狽好調説」である。

「腹痛」と「狼狽」が肝である。

ただ、緊張するだけだとことごとく失敗している。そりゃそうだ、緊張しいなのだから。(言い訳)

緊張に加わり腹痛まで発生する、その時は大抵、何か大事なイベントの直前であるため、トイレに籠城することもできない。
素早く排出し、(食事中の方すみません)汗だくで「狼狽」しながら準備をしてすぐに本番。
この結果が好調につながるのだ。なぜか。

ただの腹痛だけでは、緊張かつ腹痛と言う最悪な状態で散々な結果になるのだが、時間がないせいでしっかりと狼狽すれば良い結果が生まれる。

アドレナリンがドバドバ出ているのか、このポンコツな身体でも、なかなかに良いパフォーマンスを引き出すことができるのだ。

この説はおそらく正しい。(筆者調べ)


社会の歯車になっている今も、いや、今こそ、緊張する場は多々ある。
多くの人の前での発表、重役前で企画提案、大事な取引先との商談……

緊張の連続である。

そんな時に腹痛が来て、ニヤニヤ笑うのは私くらいだろう。

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