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2021年11月に読んだ本

11月は10冊の本を読みました。

そのノブは心の扉

★★★☆☆ 劇団ひとりによるエッセイ風のコラム集。お笑い芸人として、身の回りで起きたことを面白い話に仕立てる、というのはひとつの能力して重要ではあると思うのだけれどのだけれど、書かれている内容的にちょっと人間として「引かれる」レベルのことが平然と書いてあるのが面白い。他人を貶めるのではなく、自分を卑下する芸風。仮に書かれていることが事実でなかったとしても、そういうことを思いつく時点で非凡な才能だと思う。


民間人のための戦場行動マニュアル:もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる

★★★★☆ 日本に住んでいればおおよそ想像が難しい「戦場でどう生き延びるか」について書かれた本。これを活用する場面はそうはないと思われるが、電車内でナイフを振り回されたり、サリンを散布されたりと自分が生きているうちでそういう凶悪事件が起きているので、一生のうち一度も巻き込まれないという保証はなく、そういうときのために読んでおいて損はないと思った。


そこのみにて光輝く

★★☆☆☆ 映画化された作品のようなので、映画を見て読んだ人が多い様子。内容としては、雰囲気はあるものの凡庸で、あまり引き込まれなかった。


疑似科学入門

★★★☆☆ あやしい健康器具や家電をはじめ、世の中を見渡すと「疑似科学」で溢れている。ただ、「トンデモ研究」と呼ばれるものの中には、正当性は薄いかもしれないけれど、「思考の自由」を担保するためには必要なものもあると思うので、あやしい研究を十把一絡げに「疑似科学」と分類するのは適切ではないかもしれない。しかし、商売のために、いわば「確信犯」的に科学を誤ったやり方で振りかざすのは何か違うかな、と。


キリン解剖記

★★★★☆ キリン専門家による著書。一般的に、科学者というのは何か疑問をもって研究をスタートするものだと思っていたが、「キリンが好きだ」というところから出発し、目的もないままに解剖をはじめ、その過程で生じた謎を解き明かす、というプロセスを見て、そういう研究もあるんだと。面白かったです。


生物はなぜ死ぬのか

★★★☆☆ 死にフォーカスした生物学の本は珍しい。残念ながら、書いてある内容は既知のものが多かったが、「生物の機能としての死」について考える視点は得られたように思う。ある一定以上の領域になると、科学は役割を失い、哲学や文学に領域を譲ることになるのかな、と。


移民の経済学-雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか

★★★☆☆ 移民に関するデータをまとめた本。わりと淡々とデータを提示しているので、著者自身の考えがよく見えなかったのは残念。結局、治安が悪くなる、仕事を奪われるなどのネガティブ要因が議論されているように思うものの、環境そのものが変動するためになかなか精確に見通すのは難しい模様。しかし、いま一番議論されるべき部分でしょうね。


しょぼい喫茶店の本

★★★★☆ 就職活動に失敗し、Twitterで起業資金を調達して喫茶店を開業した人の話。肯定的な人も否定的な人もいるが、著者(店主)は苦労をプラスに積み上げられる人ではなく、ただ単に消耗していってしまうタイプのように見えるので、厳しい自営業の世界で削れていってしまったようにもみえる。結局、このお店も現在は閉店。でも、「こういうタイプの人が起業するとどうなるのか?」とわかった分、興味深くはあったと思います。先行きがちょっと心配になるような本でした。


ビジネスモデルを見える化する ピクト図解

★★★☆☆ この手の本で、「図解」してあるものは多いけれど、「図解」することを勧めるものは少ないと思うので、参考にはなった。ただ、このやり方で本当にあらゆるビジネスモデルが余すことなく表現できるか? というと、はなはだ疑問。極力シンプルに表現することは必要ではありますが、それが成立しにくい場面があることも明記ほしかったです。


地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる

★★★★☆ 気候変動に非常な関心と行動を寄せるビル・ゲイツによる著書。本としての構成は非常にシンプルで、気候変動が起きる要因を分析し、炭素を排出しないための項目を5つの分野に分け、それぞれの分野における現況と、その解決に期待できる技術を列挙してある。あまりにシンプルで、あまりに本質を突いているので、やや退屈に感じるか、悲嘆して絶望的な気分になってしまうかもしれない。しかし、こういうことを整理し、知ることが出発点であることを知らなければならない。







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