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個人的に気になったニュース10選[01/31〜02/06]

❶米株市場にも分断の影

 米国の株式市場で、特定の銘柄の乱高下し、相場が荒れている。「レディット」などでつながった個人投資家らが結託して、ゲームストップ株などを空売りしていた「シトロン」の株を買い、「締め上げ」をした形だ。その背景には、コロナの影響で出動した財政政策や金融緩和策が逆に富裕層のさらなる所得増へつながったことによる「分断」にあるとされ、かつ、ロビンフッドなどスマホで少額から株取引を行うことができるインフラ整備がこの流れを可能にしたといえる。
 インターネットの世界では日常的に起きる「炎上」だが、株式市場においては、プロの機関投資家をてこずらせるほどの影響が出始めている。「スマホで誰でも手軽に」株取引が行えるのはたしかに魅力だけれど、そのおかげで、株式市場がまるでスマホゲームのように簡単に扱えるものとなり、単に人気があるというだけで不当に高く評価されたりするなど、マネーゲームとして株が扱われることがますます加速するのではないかと思う。ただ、これで何か規制をするならば、それは機関投資家の保護にしかならないのでは。

❷ミャンマーでクーデター 米欧、一斉に非難

 今週一番のビッグニュース。ミャンマーで、現政権トップのアウン・サン・スー・チー国家顧問らが国軍に拘束され、クーデターが実行された。現在は、ミン・アウン・フライン国軍総司令官が、憲法に基づいて全権を掌握しているとされる。国軍総司令官は、昨年11月にあった選挙のうち、有権者のリストに不正があったとして、再度の総選挙をすることを表明している。日本を含む複数の外国が派遣した選挙監視団は選挙について「おおむね自由で公正な選挙だった」と認めており、その理由の正当化に躍起になる国軍の今後の動向も注目される。
 何度か仕事でミャンマーに行ったことがあるけれど、同国でのビジネス展開は政情が不安定で、法律がコロコロ変わるため、なかなか先が見通しづらいという特徴があった(不安定である、ということがプラスに働く局面も多いが)。ただでさえ、コロナ禍でロックダウンなども起きている状況なので、今後、日系企業がどのように動くかも注視していきたいと思う。

❸ベゾス氏退任、火種残し アマゾン

 GAFAの一角であるアマゾンがトップ交代に踏み切る。創業者のジェフ・ベゾス氏は、9月までに退任する意向を発表し、後任は現在の収益の柱であるクラウド事業を育てたアンディ・ジャシー氏に引き継がれる見通し。ジェフ・ベゾス氏は、常勤の会長としてアマゾンにとどまるものの、軸足は教育や環境分野の慈善事業などに軸足を移す見通し。
 GAFAのうち、2社が創業者以外のCEOになっているけれど、ついにジェフ・ベゾスも交代。星の数ほどもあるeコマース企業のうち、アマゾンがなぜここまで成長したのか? という疑問については、もちろんビジネスモデルの先見性もさることながら、その「組み立てる順番」がとにかくうまかったんだろうな、と思う。創業時は書籍のみのオンライン書店としてスタートし、インフラやM&Aを続けながら大きくなり、いまはクラウドやコンテンツ企業としても代表的な企業になろうとしている。労働環境が過酷だとか批判されがちではあるけれど、ひとつひとつ着実に歩みを進めてきた偉大なベンチャー起業家だったんだな、と思う。

❹欠かせぬ国防の視点

 塩野義製薬の社長からのコメント。米ファイザーや米モデルナのワクチンは、新技術を使っており治験期間も約半年と短く、これまでの常識を超えているので、安全確認の観点から、まだ怖いのが現状、とのこと。50ヵ国で接種が実施されているなかで、日本はまだスタートしていないが、リスクとベネフィットと考えるならば、いまの状況ならそれほどおかしなことではない。また、国家安全保障の観点からも、来年も再来年も7000億円をかけて買い続けるのか、という問題もある。
 塩野義製薬の社長のコメントなので、多少のポジショントークはあるかもしれないが、的を得た意見だと思う。パンデミックにつき海外製薬会社から買い付ける、というのは仕方のない発想ではあるけれど、国防の観点からも、可能であれば国産メーカーのものを使いたい、と思うのが自然だと思う。ワクチンの供給を受ける側でなく、与える側であらねばならない、というのは確かにその通りだ。

❺「医師未確保」主要都市9割

 厚生労働省は4月1日に65歳以上の高齢者3600万人への接種をはじめることを想定し、自治体に準備を促している。だが、接種時期や量の具体的な指示がなく、ほぼすべての地域で医師の確保ができていない。当初は接種時期の想定を3月としていたが、それが後ろにずれ込んでおり、計画が二転三転して都合がつかない模様。確保に急ぐ河野大臣も、3日の段階で、まだ供給スケジュールが確定していない、と発表した。
 前例のない規模でのパンデミックなので、診療・治療に対応する医師も通常業務に忙殺され、ワクチンの集団接種にまわせる医師が残っていない、という問題。先行きが見えない中なので仕方のない部分もあるとは思うが、スケジュールや計画を関係者に早期に伝えていかなければならない。機材や輸送方法だけでなく、やるべきことがたくさんある。

❻コロナ下 予算委に全閣僚 3密回避呼びかけと矛盾

 現在、パンデミックによる緊急事態宣言下にもかかわらず、国会の予算委員会では全閣僚が出席して答弁している状況が続く。答弁は菅首相など特定の議員に集中し、予算をめぐる議論では答弁機会のない閣僚もいた。予算委の基本的質疑や締めくくり質疑へは全閣僚が出席する慣例となっており、開会から閉会まで閣僚席にいることになる。
 世間やメディアで報道しているほどは思っていないけれど、国民に自粛や密回避を呼びかけている立場にもかかわらず、そういった要請とは反した行動をとる人が多いな、とは思う。実際に、過剰とも思えるほどにコロナ対策をしている人がいるけれど、そうしたレベルの行動をトップに立つ人々が率先して行えば、少しは示しがつくと思う。

❼「偽アカ」乱立、悩む小売り

 インスタグラムなどのSNSで、ダイソーや資生堂など企業を騙る偽アカウントが流行しており、個人情報の入力を促すなど犯罪のツールとして利用されている。トレンドマイクロによると、少なくとも66のブランドが偽アカウントの存在を公表した。スターバックスや成城石井など、生活に密着した企業に偽装する例が多い。背景には、新型コロナウィルスの拡大により、各企業がSNSを活用した販促を加速させていることがある。
 詐欺の手口が電話からメールへ、そして最近はSNS。人の通信手段は、こうした犯罪の道具としても使われてしまうらしい。SNSで販促を行う必要は必ずしもないとは思うけれど、こうした犯罪を防ぐ意味でも、企業は公式アカウントを開設しておくほうがいいかも。めんどくさい時代になったもんだ。

❽森氏発言 批判やまず 都・組織委に抗議の声殺到

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視ともとれる発言が関係者の中で波紋を呼んでいる。民間からも海外メディアからも抗議の声が殺到する事態となっている。森氏は、「女性を増やしていく場合は発言の時間もある程度、規制か何かしておかないとなかなか終わらないので困るといった話もある」と発言したとされる。
 発言当時はくだらないというか、そういう人物だからそういうこともあるだろうという感じで、あまり大きな記事とは受け止めていなかったのだが、ネット上で「炎上」し、さらには海外メディアからの批判も受けて、会長の辞任にまで発展してしまった。軽い気持ちで今までは発言できたことが、ネットによって「可視化」されることで事態が大きくなってしまう典型かな、と思う。

❾アマゾンとインテルの明暗

 アマゾンのジェフ・ベゾスと、インテルのボブ・スワン氏がCEO職を引退する。ベゾス氏は「勇退」とみなされているが、スワン氏は「事実上の解任」だとされている。かつて、インテルは「すべてのパソコンに、同社のマイクロチップが載る」とされるほど市場を席巻していたが、時とともに凋落し、新興の半導体メーカーにその座を譲りつつある。その要因としては、企画から製造・販売まで、縦割りの組織体制が通用しなくなりつつある、ということが背景にある。
 垂直統合型の組織になりがちな日本企業は「帰属意識」よりも「従属意識」が高く、自分に合った会社を求めて転職を繰り返す欧米人のほうが「帰属意識」は高いのではないか、という指摘は面白い。もちろん、「水平型」も万能ではないが、いまの時代において強力であることは確かだと思う。

➓高スキルの若者、転職で争奪戦

 若年層の転職市場で企業は専門性の高い人材の確保に動いており、ITなどの募集は過去最高水準で推移する。IT系人材以外にも、「課題解決、変革、推進」などのキーワードが並ぶ。コロナ禍で、未経験人材を育成する体力がないことや、対面での研修が難しいことなどが背景にあるようだ。副業での若手の確保も進んでおり、高スキル人材を顧問として紹介するサービスも活況だ。
 新型コロナウィルスの影響で、転職者にとっては厳しい市場なる一方で、企業にとって大きな収益をもたらす可能性のある高級人材にとっては、より有利な社会になっていると感じる。しかし、そういう人材にとってさえ、いまの自分の「武器」を活用する転職になることは間違いなさそうで、未経験の分野に踏み出すのは難しいかもしれない。

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