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【小説】「きみはオフィーリアになれない」

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謎の魚「オフィーリア」をめぐる、現代社会を生きる3人の群像劇。
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#小説

「きみはオフィーリアになれない」あとがき

こんにちは、やひろです。 長きにわたりここで連載してきました、「きみはオフィーリアになれ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 最終話

「なに?」  女性は、珍しい花でも見るような目つきでこちらを見ている。この女はすべてをわ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」まえがき

「きみはオフィーリアになれない」というタイトルの小説の連載をはじめます。 noteでは「黄泉…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #001

●主要登場人物 安達凛子………旅行代理店勤務 梶原江利子……凛子の同僚 瀧本達郎………メン…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #002

 先輩とは同じ大学に通っていたが、一緒の授業を受けていたわけではない。そもそも凛子は文学…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #003

 凛子はその魚を一目で気に入った。休みの日に、先輩が車に水槽と用具一式を積んでやってきた…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #004

 凛子は手すりを掴むと、台によじのぼるような動きで、柵の上に立った。普段は全く意識しない、ビル風のようなものが身体のまわりを駆け抜けていく。あと少し、ほんの少し重心を前にずらすだけで、死ぬことができる。凛子は背中にぞわっとしたものを感じ、柵から降りた。こんなことをするのは初めてだった。全身から汗をかいていた。  きっと綺麗な死に顔ではいられないだろうな、ここから落ちたら。顔面はぐちゃぐちゃで、復元など到底できなくなるはずだ。  顔が復元不可能なほど痛んでしまった場合は、どのよ

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #005

 しかし、ちょっと噛まれたぐらいで、こんなに効くなんて。これは猛毒ではないのか。  そう…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #006

 どうすれば夢から覚めるのだろう、と凛子は考えた。夢から覚める方法について考えたことなど…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #007

 不意に、凛子のすぐ右のドアに、何かをこすりつけるような音がした。ドアに何かがこすりつけ…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #008

「エイジくんか。クラゲさんがどういう人かはわからないけど……たぶん、知らないと思う」 「…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #009

「おやすみなさい」 「ちょっと、ちょっと、待って! あたしはどうすればいいの?」  凛子は…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #010

 自分は疲れているだけなのだ。そう、ちょっと疲れているだけ……。  ちょっとだけ、眠らせ…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #011

 ゆっくりと影がベランダの床を指さす。目をむけると、そこに、先輩から貰った白い魚が、ぐったりと横たわっていた。  凛子はあわててベランダに駆け寄り、大窓をあける。そして、白い魚を、両手で拾い上げた。  鱗の感触が指に伝わる。魚はぐったりしたままで、触れても微動だにしない。死んでしまったのだろうか。振り返ると、影はじっとこちらを見つめている。いや、影に顔があるわけではないから、見つめられているかどうかはわからないが、見つめられているような感じがする。  凛子は白い魚をもったまま