見出し画像

『鉄なべぎょうざ』について

 今年も気づけば、あっという間に12月。今年も恒例となって参りました餃子アドベントカレンダーにエントリーをさせて頂きました。
 体調を崩していたこともあり、今年はそれほど多くの餃活は出来ませんでしたので、私の大好きな『鉄なべぎょうざ』についてお話しをさせていただこうと思います。


金を失わないための金の矢

これぞ鉃なべのぎょうざ!!
(写真は本店鉃なべにて焼き餃子1.5人前)

 鉄なべ餃子発祥の『やまとぎょうざ 本店鉃なべ』(以下 本店鉃なべ)の屋号について、実は鉄の字が『鉃』となっています。
何故か?
鉄の字は、金を失う。と書いて鉄。
それでは商売あがったりだと、失うを矢に換えて『金の矢』として屋号を作られています。
だから『本店鉃なべ』の暖簾・箸袋など全てのロゴは『鉃』なんです。


本店鉃なべ

ぎょうざを載せた鉃なべは、専用の鉄のレールに載せて提供されます。
ぎょうざの厚みは平べったく、ひとくちでパクッといけるサイズが特徴です。
本店鉃なべに代表される八幡ぎょうざの鉄なべぎょうざは、どちらもこのサイズが特徴となっています。

 鉄なべぎょうざ発祥のお店。『やまとぎょうざ本店鉃なべ』。昭和33年創業。
 創業当時は福岡県北九州市八幡西区(やはたにしく)の折尾駅前にありましたが、その後再開発などもあり現在の地、北九州市八幡西区黒崎駅前に移転しました。
 創業者の宇久温子(うくはるこ)さんは、戦後の折尾で饅頭屋を営んでいましたが、これからはぎょうざ屋の時代と営業形態をシフトチェンジしました。しかし焼いたぎょうざが冷めてしまうことに悩んでいた頃、絵描きでもある実のお兄さんが東京・銀座に行った際に喫茶店で食べたナポリタンが熱々の鉄の皿に載って出てきたことに驚き、妹の温子さんに伝えたところ「それだ!」と閃き、知り合いの京都の鋳物鍛冶職人の方に直径18cmの鉄なべを作ってもらい、その上でぎょうざを焼いて出したところ、瞬く間に大人気のぎょうざになりました。
 現在は2代目店主の宇久知紀(うくとものり)さんが経営を引き継ぎ、黒崎の本店鉃なべのほか、工場兼ぎょうざ販売所の『中間店』、創業当時の折尾にある『えきマチ一丁目折尾店』など、各店舗それぞれに賑わいを見せている。
 最後の一粒まで熱々で食べることのできる鉃なべで焼いたぎょうざは、今もなお地元の方に愛されています。

現在の黒崎駅前にある『本店鉃なべ』の店舗の外観
店内はU字の独特のカウンターでお客さまをお待ちしています。

店名:本店鉃なべ(やまとぎょうざ 本店鉃なべ)
住所:福岡県北九州市八幡西区黒崎黒崎1丁目9−13
定休日:木曜日
営業時間:11:00~22:00
創業:昭和33年


鉄なべ 荒江本店

揚げ焼きにした鉄なべ餃子。八幡の鉃なべぎょうざよりも厚みがあって食べ応えも充分!!
本店鉃なべと同じく並びは縦並びで4列(少し溢れています)。
(写真は4人前)

 創業者の二田寿子さんが妹である林チヅ子さんと共に、北九州市八幡西区折尾にあった本店鉃なべにて働いたのち、博多駅前の屋台で鉄なべ餃子を提供したのが始まり。その後、早良区荒江に『鉄なべ 荒江本店』を開店。現在は2代目の奥さまの二田美紀さまと、3代目ご主人の二田豊さまにて経営。
鉄なべ餃子はもとより、酢もつや手羽先、ポテトサラダやレバニラなどの一品料理も人気でとてもおいしい。
ほかの鉄なべ店でも食べることのできるこちらの炊いた手羽先は荒江本店での提供が始まり。パクッといくとお肉がほろほろとほぐれて食べ易く、味付けも良いので何本でも手が伸びてしまうこともしばしば。その他、餃子定食などの定食メニューも豊富で、お一人様から家族連れ、仲間内とシーンを選ばずいつでも訪れやすいお店です。
 現在、鉄なべ荒江本店の餃子は、大阪府内の2店舗(博多名物鉄なべ堺東店・阿倍野店)でも頂くことが出来ます。

創業者の女将さんからの秘伝で作られるポテトサラダや手羽先などは餃子と共に絶対に食べて頂きたい逸品です。
昭和37年創業の初代店舗の様子。
現在は4階建てのビルになり、お店は2階にある(1階は駐車場)

店名:鉄なべ 荒江本店
住所:福岡県福岡市早良区荒江3丁目10-4
定休日:月曜日(祝日の場合営業、翌日休業)
営業時間:17:00~24:00
創業:昭和37年


鉄なべ 中洲本店

餃子のカタチが弓なりになっているのが特徴。本店鉃なべにならって縦置きのスタイル。

 創業者の林チヅ子さんが姉の二田寿子さんと共に、博多駅前の祇園町にて屋台で鉄なべ餃子を提供したのが始まり。
その後、昭和43年に福岡市中央区春吉にて店舗をオープン。昭和45年には博多区中洲1丁目(南新地)へ移転。現在の本店がある西中洲へは平成13年に移転。現在は二代目の林由起雄さまが経営されている。
 西中洲の本店のほか、中洲4丁目に『であい橋店』、『福岡PARCO店』(現在は閉店)と、博多の人気餃子店舗として今もなおたくさんの餃子を焼き続けています。
 中洲本店から車で10分の美野島には本社兼工場もあり、すべて手作りで餃子を製造されています。工場ではお持ち帰りの生餃子の販売もしています。

中洲1丁目(南新地)の頃の店舗の様子
現在の西中洲にある中洲本店の店舗外観

店名:博多中洲 餃子の店 鉄なべ(鉄なべ 中洲本店)
住所:福岡県福岡市中央区西中洲1-5
定休日:火曜日
営業時間:月曜日~木曜日 15:30~23:30(OS:23:00)
     金曜日 15:30~3:00(OS:2:30)
     土曜日 11:30~3:00(OS:2:30)
     日曜日 11:30~23:30(OS:23:00)
創業:昭和38年


博多祇園鉄なべ

博多の鉄なべ餃子人気を全国区に広めたと言っても過言ではないこの赤い暖簾!

 鉄なべ荒江本店を創業した二田寿子さんと、鉄なべ中洲本店を創業した林チヅ子(旧姓二田)さんのご姉妹が、博多駅近くの祇園町で屋台を引いていた後に、店舗開店のためにそれまで使っていた屋台を譲り受けたのが、『博多祇園鉄なべ』の始まり。二田さんご姉妹と同じく親戚関係にあるこちらも二田さんが現在も経営されている。
 八幡の鉃なべぎょうざや、鉄なべ荒江本店・鉄なべ中洲本店が餃子を縦に並べて焼くのに対し、はじめて餃子を円形に並べた状態で焼いて提供したのがこちら博多祇園鉄なべである。
 現在の博多駅に近いこともあり、多くの旅行客や著名人にも愛されるこちら博多祇園鉄なべの餃子が、一躍全国人気の鉄なべ餃子になったと言っても過言ではありません。
 博多祇園鉄なべからの唯一の暖簾分け店である東京・阿佐ヶ谷の『博多鉄なべ餃子なかよし』さんでは、関東でも本場のおいしい鉄なべ餃子を味わうことが出来ます。

3人前以上を注文すると、餃子が円形に並んで運ばれてきます!

店名:博多祇園鉄なべ
住所:福岡県福岡市博多区祇園町2-20
定休日:日曜日
営業時間:17:00~22:30
創業:昭和42年


『閑話休題』 なぜ本店のつくお店が多いの?

 『本店鉃なべ』『鉄なべ 荒江本店』『鉄なべ 中洲本店』と、こちらのまとめ記事に『本店』のワードがたくさん出てきています。また、このほかにも『小倉鉄なべ 総本店』など「鉄なべ」と「本店」のワードが一緒に登場しがちです。
何故でしょう?
それぞれのお店でご主人や奥さまにお話を伺って、その内容を私なりに纏めてみました。
 まず『本店鉃なべ』。こちらはこの記事に登場するお店のなかでの始まりのお店です。なのでその総称としての意味合いをもって『本店鉃なべ』です。
 次に『鉄なべ 荒江本店』と『鉄なべ 中洲本店』について、こちらはそれぞれの創業者の二田寿子さんと林チヅ子さんが姉妹であり、当初は一緒に屋台を引いていた後にそれぞれが独立した店舗を持つ(経営も別途)ため、その差別化のためにお互いに本店の屋号を付けました。もうひとつの意味としては、中洲本店からはであい橋店やPARCO店などの支店。荒江本店も経営は別になりますが大阪にある堺東店や、阿倍野店などのお店もある為、本店の屋号がある方が分かりやすかったところもあるのではないでしょうか。
 『小倉鉄なべ』のご主人にはお話を伺ったことはないのですが、こちらも総本店のほか、「魚町店」や「えきなか店」がある為、屋号に総本店があると思います。
 余談になりますが、本店鉃なべと同じ北九州市にある小倉鉄なべに関しては、上記のような本店鉃なべとの経営上の繋がりなどはありません。現在よりも前の小倉鉄なべの経営者の方と、本店鉃なべのご主人との間に、小倉で鉄なべの店舗を出したい。と屋号使用の相談があり、ある一定の条件と共に使用の許可を出した後、その店舗は倒産ののち閉店。その経営権を譲り受けたのが現在の店舗であり、当初のお話し合いによる条件は有耶無耶になったままであるとのことです。
 少し脱線してしまいました。本題に戻ります。
 北九州市八幡にある本店鉃なべ。そして博多で有名になった鉄なべ荒江本店と鉄なべ中洲本店。この3店舗の繋がりは今もあって、それぞれが始まりのお話をしてくれます。
「始まりは折尾にあった本店鉃なべなんよ~」
本店鉃なべの2代目ご主人の宇久知紀さんは「懐かしいね~」とおっしゃってくれます。
2018年に八幡(やはた)ぎょうざ協議会の主管で『九州ぎょうざ祭り』を開催した際、博多地区からの福岡県代表で鉄なべ中洲本店を紹介してくれたのは本店鉃なべのご主人の宇久さんでした。
なので、巷で噂されているような、何処もかしこもが「はじまりはうち(こちら)なんよ!」と言うような意味での『本店』を主張しているようなことはないのです。
 鉄なべぎょうざの(北九州の)始まり。そして博多での始まり。それぞれの始まりを以て今の鉄なべぎょうざがあるのです。それぞれがお互いをリスペクトしながらそれぞれの進化をしている鉄なべぎょうざ。是非一度味わってみてください。ご希望があればそれぞれのお店へご案内しますよ。

昭和37年当時に博多駅前で営業していた屋台。
この鉄なべ餃子のおいしさが広まり、博多の名物になった。
昭和37年当時の博多駅前祇園町付近(手前がその当時の博多駅、奥が新しく建設中の博多駅)
博多の鉄なべはこの駅前で屋台にて営業したのが始まり。


鉃なべ(若松)

本店鉃なべからの直の枝分かれ店なので、本店鉃なべ同様に薄く平べったいぎょうざはやはり似ています。

 北九州市若松区に昭和48年創業。創業した店主は本店鉃なべの創業者である宇久温子さんの弟さん。
 私の子ども時代の昭和50~60年代、お店の従業員であった名物おばちゃんと、官営八幡製鉄所誘致から多くの工場が建った北九州工業地帯で働く職工(労働者の方)のおじちゃんたちで若松の鉃なべは盛り上がっていました。餃子はおじちゃんたちのスタミナ源となり、私も含めた子どもたちにはとっておきのおいしいご飯のおかずへとなりました。
 現在、経営は変わりましたが、昔ながらの形でのおいしいぎょうざを提供頂いています。

本店鉃なべ、若松の鉃なべ、ぎょうざ工房 風人。と、鉃なべの下に敷かれてある『鉄』のレールがカウンターを横断しています。どちらに座っても鉃なべを置くことが出来ますね。
熱々の鉃なべは火傷注意なので絶対に素手では触らないようにしてください。
お店の片隅では職人さんが常に皮を伸ばしています。皮の厚み、大きさもほぼ均一で伸ばした皮が円筒状に積み重なっています。

店名:鉃なべ(若松鉃なべ)
住所:福岡県北九州市若松区中川町1-23
定休日:水曜日
営業時間:15:00~21:30
創業:昭和48年


ぎょうざ工房 風人。

ランチタイムから開いている私のオアシス!

 北九州市八幡西区楠木(折尾地区)にて創業。創業者の蒔田(まきた)さんは、上記の若松鉃なべの名物おばちゃんの息子さん。子どもの頃から若松の鉃なべでお手伝いをされていたから、大人になった時に楠木にて独立開業をされています。若松鉃なべで働かれていた当時と同じく、皮も餡も手作りに拘られています。
 奥さまと二人で切り盛りされているお店は、ランチタイムから営業されていて、仕事で多方面を移動する私にとってはかなり有り難いお店で、折尾方面に仕事で向かった際の私のオアシスとなっている。
 元教員であるご主人の蒔田さんの学生時代の家庭教師は本店鉃なべの2代目ご主人の宇久知紀さんであり、宇久さんからは「そんなこともあったね。懐かしいね~」。蒔田さんからは「本当にお世話になったんよ!」と、温かい繋がりを感じる。

ランチセットの焼ぎょうざと焼そば。焼ぎょうざの香ばしさと、焼そばに掛かる特製ソースと半熟たまごのネットリ感に毎回舌鼓を打っています。
焼ぎょうざと焼めしのランチセット。
上記の焼そばのほか、中華そばやちゃんぽんと焼ぎょうざをセットで頂ける。
フライパンではなく鉄板の上で焼き上げたこの焼めしも絶品!!昔懐かしのアルミ皿で頂けるのもおいしさが倍増する。

店名:ぎょうざ工房 風人。
住所:福岡県北九州市八幡西区楠木1丁目2-20
定休日:月曜日
営業時間:11:30~22:00


八幡(やはた)の鉄なべぎょうざ

 官営八幡製鉄所の誘致と共に栄えた当時の八幡市(現在の北九州市八幡東区・八幡西区)は、多くの職工(労働者の方)さんが町も工場も支えていた。
 仕事が終わると、街でお酒を一杯引っ掛けて帰る。そんな職工さんたちのスタミナ源になったのが八幡ぎょうざの始まりと言っても過言ではない。
そんな八幡のぎょうざのなかで、特に好まれて食べられたのが鉄なべぎょうざだった。
 創業から間もない本店鉃なべで使われていた18cmの鉄なべで焼き上げた当時のぎょうざは縦に2列並べるのが主流。鉄なべのサイズが小さかったため、縦にしか並ばなかったのがその理由であるが、その名残は今も尚それぞれのお店に残り『縦に2列』のぎょうざを見ることができる。

折尾駅を降りてすぐにある『池田屋の鉄板餃子 折尾店』の餃子。
ノーマルの焼きぎょうざの香ばしさと、カレー風味の焼きぎょうざとおいしさにバリエーションがある。
最近はエビの揚げ餃子が大人気の八幡の人気店。
こちら折尾店のほか、黒崎駅前の黒崎店や遠賀店もある。
八幡西区八枝にある『折尾のぎょうざ あや』の焼きぎょうざ。
スタンダードな焼きぎょうざや水ぎょうざのほか、海老ぎょうざ、辛子明太子ぎょうざ、キムチぎょうざ、グラタンぎょうざ、チーズぎょうざ、角煮ぎょうざなど変わり種ぎょうざの宝庫。
お腹一杯になったら折やき(おやき)のデザートぎょうざもあるので、楽しさが尽きない。
八幡駅近くにある『ぎょうざ亭 たしろ』の焼ぎょうざ。
手前が「鉄板焼ぎょうざ」で、奥が「大葉巻ぎょうざ」
八幡の中でもピカイチな薄皮の為、餡が透けて見える。
個人的な好みもあるが、大葉ぎょうざは蒸しぎょうざで頂くと絶品。
八幡西区黒崎にある『ぎょうざ いづみ』の焼ぎょうざ。
皮も餡も手作りで、皮は厚めでもっちりしている。
真ん中だけを閉じてあって、両端はわざと開けて焼いてある。
焼ぎょうざと水ぎょうざ、お店のお母さん特製の漬物が名物で、八幡で一番人気の呼び声も高い。


福岡県内の鉄なべ餃子

 鉄なべ餃子発祥の地とあって、同じ福岡県内にもたくさんの餃子処、鉄なべ処があります。まだまだ全店を訪問することは出来ていませんが、少しだけでもご紹介させてください。
 博多にある『博多餃子 游心』や、八女の『鉄なべ たんたん』は未だ未訪問。まだまだ宿題は多いです(汗)
 今回は、久留米にある『ぎょうざ 五十番』と北九州市小倉北区にある『小倉鉄なべ』をご紹介いたします。

福岡県久留米市にある『ぎょうざ 五十番』の焼きぎょうざ。
焼き目を下に向けたままで提供されるスタイル。
皮はもっちりしていて、ビールに良く合う。
『娘娘』さん、『湖月』さん、『又兵衛』さんと共に久留米餃子の人気処として有名なお店。
福岡県北九州市小倉北区の『小倉鉄なべ』の鉄なべぎょうざ。
3人前以上の注文で写真の様に円形に並べて焼いてもらえる。
ランチメニューも豊富でお昼から餃子を堪能できるほか、冷凍餃子や焼餃子のお土産餃子も充実しているので、近場から遠方へのお土産で利用できるのも嬉しい。
総本店のほか、魚町商店街にほど近い『魚町店』、JR小倉駅の中にある『えきなか店』と小倉にいたらどこでも利用しやすい店舗立地となっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?