晩夏

夕暮れ 新しいアルバムのマスターを聴きながら電車に乗っていた
車窓の奥の空が冷えていく
目を節穴にして流れ込んでくる空を飲んでいた
久しぶり
自分から遠い位置で望んだ働き方をする器官
とてもふわふわな繊維で包まれた棘を触る夢を昔からよく見る
棘にたどり着く前の指だけが残っている
それ以外の僕はうるさい遺構かもしれないと思う

いつになくこの夏は一息で過ぎ去っていった
演奏も制作も沢山した
ここで季節の継ぎ目を引く
ジ-----------------------------------------------------------------ッ
新しく笑っていてくれないと生きていられないよ
綺麗に円弧を書いてしまったがために打ち消しあってしまうよ
届かないことにもう随分前から絶望の血が引いていて青い
名前に空と入っていて可笑しな気持ちになるのはその青さに因るのか
どうか新しく笑っていてください

次の歌の中にいる人へ手紙を書くので追いつかなくなる
最近はまた写真を撮るようになった 友達の写真
当たり前に映らない私が確かにいることが嬉しい

明け渡すことなく在った場所を明け渡さないままの光で照らしてくれた人に
手紙を書いて送った 
生まれて初めてファズを踏んだ

『全て』
最高にうるさく

溢れていった時間
巻き戻せるものは先へ続いていく
安心した?
それどころじゃないよ
やっと見つけた、ように、抱きしめていただろうに、
でもよかったよ
窓を二つ開けて新しい空気が流れ込んでくる
見覚えがある、初めて出会う、
何度も生きていく約束をする
優しい声がする
生まれてよかった、より生きてきてよかった
何度も

夕暮れ 次の歌の中にいる人と目が合っていたこと
どうやら誰も教えてくれないみたいですね
誰にも明け渡さないまま
体の外にある心臓
波に揺れる像に投石を続ける日
驚いた
すごい大きい音がした気がした
花火だった
遠いけど少し見えた

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