技術書典の雰囲気をもっとよくしたい話
技術書典7おつかれさまでした。この記事では私が技術書典のイベント現場で感じた雰囲気についてのモヤモヤ感を整理して、最終的に雰囲気を良くしたいよね〜という話をしようと思います。ちょっと長いです。
これは一サークル参加者からすべてのサークル参加者に向けたメッセージです。
みんな少しずつ感じ悪くなってないか
私がイベント現場で感じた雰囲気のモヤモヤ感の正体はこれです。
サークル、なんかちょっと感じ悪い。
私は技術書典5で初サークル参加して以来、技術書典6、銭けっと2、技書博1、コミックマーケット96、技術書典7の順番で活動してきたので技術書典以外のイベントはコミケと技書博と銭けっとしか知りません。ですのでそれらとの比較になります。
なぜそう感じたか3つ事例を挙げて説明します。
スペースがうるさすぎ
私のいた「す24D」のスペースの近隣では呼び込みが盛んに行われていました。これが度を超してうるさかったです。具体的に言うなら、会場アナウンスがまったく聞こえない。会場アナウンスは聞き取りやすいよう、ゆっくり間隔をおきながら話されていたのですが、それでも聞き取れない。買い物に行くときに自分のスペースを離れて2Fの別の場所に移動して「なんて静かなの!」と感じ、さらに3Fに移動すると3Fは音量調整が大きめになっていたのを感じて「なんてアナウンス聞き取りやすいの!」と驚きました。もし開催期間中に火災などが発生していても私は逃げ遅れていた自信がある……ってくらいひどかったです。運営スタッフもその辺で何か言っているのですが何を言っているのか聞き取れなかったです。
これに関して個別に誰が加担していたかの話をするつもりはありませんし、済んだ話に興味ありません。近隣全体がそのような雰囲気になっていたという話をしたいだけです。私は元々「積極的な呼び込みはしない」と決めています(売り子マニュアルにも明記しています)ので、周囲との落差が際立って感じられただけの話かもしれません。でも、声の張り上げ競争になっているこの状況はちょっと異様だと感じました。というのも、呼び込みが実際に売れ行きに影響していたからです。頒布物の違いはもちろんあるにせよ、私のスペースと、同じく呼び込みをしていない別のスペースの立ち寄り方を見るとどうも人が少ない。これは肌感覚なので気のせいかもしれないということは分かっていますが、イベント後に出てきたふりかえり記事で「声を出しての売り込みを始めたら売れ行きが良くなった」という記述を見ることができました。それに、売れ行きに影響しないならあんなに枯れた声になりながら終始声を張り上げる必要もないでしょう。
呼び込み自体は悪いことだと思いません。程度の問題です。いっそう声を張り上げることによって周囲に悪影響を与えることに自覚的になってほしいだけです。自覚的であれば、アナウンスの間ぐらい呼び込みを控えるといった対応が取れるはずです。でもそのような雰囲気ではなかったです。「静かにして」と一言言えばいいのかも知れませんが、もし現実の状況を見れば到底無理であると納得いただけると思います。
なお、これは今回に限った話ではなく、技術書典5(初参加)のときは私自身、声を張り上げて呼び込みをしていたということは付記しておきます。
みんなスペースをはみ出しすぎ
一般に、イベントにおける「立ち読み客の隣へのはみ出し」は頭の痛い問題です。スペースの間にはサークルの責任分界ラインが存在しますが、技術書典のように「慣れていない一般参加者」が多くを占めるイベントではそれを理解しない人が必然的に多くなります。これは仕方のないことです。このようなときに何かをするのはサークル側の役割です。自スペースに来た一般参加者が隣のスペースにはみ出さず、隣の頒布に支障が出ないように誘導するのが当然です。ところがそれが守られていたとは言いがたい状況を複数確認しています。何より私のサークルは頒布に支障が出ていました。
これについても個別に誰が加担していたかの話をするつもりはありませんし、済んだ話に興味はありません。隣同士で個別に話が付いていれば譲り合ってお互い様の世界ですし、私のスペースの問題も「やめてもらえませんか」と一言声をかければ済んだ話です。はみ出し自体もすべて防ぐことはできませんから、程度と姿勢の問題です。少なくとも私の隣はたくさん人がいながら誰一人周囲に目を配るようなことはなかったように思いますので、おそらく全員が「イベントとはこういうもの」と誤解されてしまっていたのではないでしょうか。そうでなければ、隣スペースの前が十分空いているような状況で私のスペースの前に居る人に対して見本を渡しまくることもなかったでしょう。私の勇気の不足もあり、残念でなりません。
なお、これは今回に限った話ではなく、前回のときは逆に私のスペースがあまりに混雑したため、立ち読みする一般参加者にはみ出さないように何度も声をかけざるを得ず、お隣さんに何度も「大丈夫ですよ」と言わせるような状況だったことは付記しておきます。
一言挨拶したほうがいい
私はイベント参加の際は、着いてすぐに両隣スペースにご挨拶差し上げるのですが、今回は時間の関係でそれができませんでした。片方のお隣さんは声をかけていただいてご挨拶したのですが、もう片方のお隣さんはタイミングを失ったため、初めてお話しするのが開場後になりました。そちらのお隣さんは一冊のページ数が多かったこともあって自分のスペースに収まりきらない量の段ボール箱がおかれており、当然ながらそれを捌くにあたって周囲にはみ出すことが常態化していました。これについて、一言断りがあってもよかったのかなと思います。
もちろんここで誰がやっていたとかの話をするつもりはありませんし、済んだ話に興味はありません。ただ、私も人の子なので断りなしに我が物顔されるとムッとしますし、個別に話が付いていれば譲り合ってお互い様で通る世界だと思います。
同人マナーをどのように扱うか
上記で挙げたのはいずれもマナーの問題です。私もどこかで似たようなことをやらかして「感じ悪いな」と思われている可能性もあります。ですからこれらをルール化してかえってギスギスするような状況は望んでいません。そもそもこのようなマナーは同人文化で生まれ培われたものであり、完全な同人イベントと言うことができない技術書典において100%同じものを持ち込めるとは思っていません。ただ、長年培われてきたマナーにはそれなりの合理的な理由があり、実際にコミケ等の同人イベントから参入されている方が多いという事情を考慮し、同人イベントのマナーに準じた振る舞いを私はしています。
マナーは人に強制されるものではなく、私からは「こうしたほうがいいですよ」ぐらいにしか言うことができません。マナー問題についてこうして記事に書けるようになったのはおそらく私が技術書典を3回経験してようやく周囲に目を配れる余裕ができたからですし、新しくサークル参加したばかりの人にとってはそれどころではないと思います。技術書典のように新規流入率が高い場合だと、多くの人が手探りの状況になるので経験不足から来るやらかしは必然的に多くなります。それを経験者側が寛容な心で受け入れられることも「よい雰囲気」の一部であろうと思います。また、マナーの周知は経験者の責任であると思います。
私はいわゆる「マナー講師()」になってマナーを無駄に作るつもりはありません。初心者に物申したいだけの厄介おじさんになるつもりもありません。マナー警察として取り締まりをするつもりもありません。ギスギスとゆるゆるの間のちょうどいいあたりに界隈の雰囲気が近づけばいいなぁと思ってこのような記事を書いています。現在のよい雰囲気が今後も続けば良いと望んでいます。
技術書典は競争の場所ではない
呼び込み問題や立ち読みはみ出し問題とも「売れ行きをよくするためにやったもん勝ち」の状況になっているのが問題だと思います。同人世界で各人どの程度利益追求していくかという話は永遠の課題ですが、今は「利益追求的な振る舞いをすることこそ是」という方向に傾きつつあるような気がして、フェアであることが蔑ろにされそうで怖いです。私自身が「売れるならドンドン売ろう」の考えでやってきたのでお前が言うなという話なんですが、やったもん勝ちの世界は最終的に全員不幸になるような気がしています。同人イベントは一般参加者の立場からよく「戦場」に例えられます。しかし闘いではあっても競争の世界ではないです。
たとえば呼び込みをして売上が上がるのなら、私のように呼び込みをしないサークルは不利です。私はこのような、構造から来る些細な不公平感があちこちに散らばっていて、技術書典の規模拡大に伴ってどんどん拡大しているように思います。それに対しては、運営には運営のできることがあり、サークルにはサークルのできることがあります。サークルのできることはお互いに敬意を払い、手の届く範囲でマナーを守りよい雰囲気の維持に貢献すること、マナーの周知をすること、この2つだと思います。
マナーは心の余裕ありき
挨拶問題が特徴的なのですが、マナーは結局のところ「周囲に目を配れる余裕がその人にあるか」に依存しています。今回のイベントはサークル入場が遅れ、設営時間に大きな制限ができました。このような時間のない状況でのんびり挨拶してネゴしてる余裕なんてありません。設営最優先になります。あるいは体力が枯渇(サークル入場待機列で体力を使い果たした人もいるでしょう)したり、空腹(ワンオペで食事が取れず図らずもイライラした状況になった人もいるでしょう)だったりして、周りからのストレスに敏感な状況になっている例もあるでしょう。このような運営起因・サークル起因それぞれの時間・体力・心などの余裕のなさが「なんかこのイベント感じ悪いよね」につながるのではないかと思います。私はそれを各サークルの事前努力と運営の仕組みづくりの力で防いでいってほしいなと思っています。
以上、私がイベントの現場で感じたことについて言葉にしてみました。私も他のサークル参加者の皆さんも人間ですから、その場で何か違和感やモヤモヤすることがあったりしても、うまく気付いたり言語化できないまま後日を迎えることがあります。私はこの記事によってそれがクリアになりましたし、皆さんにとっても言語化できるきっかけになったらよいなと思ってこの記事を公開しました。
イベントはもう終わりましたので、次があるなら次を考えましょう。
お読みくださりありがとうございました。