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汝、星の如く 凪良ゆう 講談社

オーディブルにて。
掛け値なしに面白かった。
運転中の暇つぶしのつもりが、続きが知りたくて、渋滞すれば良いのにと思ってしまったほど。

生きづらさと闘う、若い世代の苦しみが丁寧に、丁寧に描かれていく。島、という閉鎖的な設定は、昔ながらの人付き合いの重苦しさを自然にしているけれど、現代でも、都会でも、思い当たる同じようなことはたくさんある。たとえカタチが異なっても、ヒトはつるんでウワサをするのが好きなイキモノだから。
多勢の枠にはまらない者の味わう気持ちは今も昔も変わらないのだと思う。そういう意味で、ここに描かれる主人公たちの葛藤や悩みは、決して自身と無関係な遠い世界のこととは思えなくて、ついつい感情移入してしまった。

家族とか、ふるさととか、結婚とか、答えのないことにそれぞれ、彼らなりの回答を見出していく様子に心打たれる。自立して自分で生きてゆけることへの渇望、そのための代償、その上でやはり人は人と支え合っていられる方が幸せなのでは、という迷い、その支え合い方は、それぞれがもっと自由に選べたら良いのではないか、という叫びが込められたストーリーに、どんどん引き込まれ、苦労の果て、ついに「自分」を見つけた主人公を心から応援したくなる。

分かりやすく自分のやりたいことを見つけられる人ばかりではないし、ましてやそれで生きていける状態になれるなんて稀なことだと分かっているけれど、それでも、励まされる。

少なくとも、悩み苦しむ主人公たちが、そのそれぞれにひとつずつ、見ぬふりをせずに気付いていく、そのつらさの中身の解析のようなことが、なんだかとても清々しい希望のようで、決してなりふり構わぬハッピーエンドとは言えないラストシーンの後もスッキリした気持ちでいられた。

構成にも工夫があり、思わず最初に戻ってリピートしてしまったほど。

しんどいのは当たり前。
それでも、欲しいものは何か?
思わず、我が身を振り返る。

「星」の価値が分かるようになると、愚痴が減る、かもしれない。
この本に、出会えて良かった。

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