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サファイア 湊かなえ 角川春樹事務所 

オーディブルにて。
さすが・・・!と思わず唸ってしまう。いくつかの石をモチーフにそれらにまつわるエピソードを織り交ぜながら展開されていく短編集。とはいえちょっとした短編というにはひとつひとつのインパクトも大きいし、重く、深い内容の話ばかり。

この筆者は他の作品でもそうだった記憶があるけれど、回想シーンがとてもうまく使われていて、あたかも謎解きがされるように話が展開していく。

最後に「現在」に話が戻ってきた時に思わず、ああ、そうだったのか、と驚かされ、張られていた伏線に気が付く仕掛け。そこに至るまでの、繊細で鋭い人間描写、ヒトの持つ醜い感情の動きや矛盾、社会の理不尽なところなどを実にうまく表現していて、思わず「ああ、あるある」と何度も肯いてしまった。

まったく別の話の集まりで、互いに関連性はないにも関わらず、途中でやめられなくてつい、最後の話までむさぼるように進んでしまった。

読んでいてハッピーになるような内容は少ない。でもどこかにいつも、小さな希望がちゃんと隠してあって、決して絶望が結論にはならないのが救い。

でも、ちょっと怖い話が多い。
狂気と紙一重、と思える内容もある。
それが、日常とも紙一重であることが感じられて、また怖い。

永作博美の朗読が、本当に素晴らしかった。
内容を知った後も、もう一度聞きたいくらい。

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