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映画の話 コンフィデンスマンJPとMOTHER

ひとり長澤まさみ祭りの開催となった。


まずは『コンフィデンスマンJP  プリンセス編』

好きな作品なのですが、テレビシリーズは、時折しか観ていなくて。
だけど、映画のロマンス編は観ていて、三浦春馬くんの追悼の思いを込めて観てまいりました。

ストーリーはいたってシンプルで気持ちがいい。
三人のクセの強い子どもがいる大富豪が亡くなり、その遺産が、三人の子どもではなく、謎の隠し子に相続されることを知ったダー子が、偶然町で助けた不遇な環境で育った少女をその隠し子として仕立て上げて、大金を手にしようとするお話。

青い空、青い海、ゴージャスなお屋敷という背景に、三人の子ども(ビビアン・スー、古川雄大、白濱亜嵐)のクドい美しさが眩しい。
それに対しての隠し子関水渚ちゃんが、なんていうか、すっきりした味わい、清らかなかわいらしさ爆発。

おばちゃんの残念なところは、若い子の顔の区別がつきにくくなっているところなので、映画鑑賞中ずっと、「これ、広瀬すずじゃないよね・・・?」と何度も思っては「・・・違うか。」という打消し、の繰り返し。
ちゃんと出演者チェックしてから行けばよかったのだけど、できればあまり情報を入れずに見たいので、公式サイトをチェックせずに観て、結構な確率で「え。最初から知っていれば違う見方をしたのに」ということになる。
この点、反省したいと思う。

今回もそんなわけで、集中力が途切れた。
別人とわかっても、終わってからもまだ自分の中で納得がいかなくて、「誕生日を見よう。」と思って調べたら、なんと、誕生日が同じ年の同じ月。日にちは違ったけど。いや、違うのよ。違うのはわかっているんだけど。
そうね。広瀬すずの方が濃い感じかな。
同じ年には思えなかった。

南国の島が舞台なだけに、夏にぴったりな爽快感。
色々出演者も豪華で、柴田恭兵が渋い執事役とかも、良い。
時の流れを感じつつ、この結末の温度感を決める大切な役割でね。

そして、三浦春馬くん。
やっぱりキュートでセクシーで、今作も愛おしいジェシーでした。
金髪の写真の仕上がりが完璧すぎて、私もそれ欲しいと思ってしまいました。
ありがとね。

この「プリンセス編」を観る前に、せめて「ロマンス編」だけは是非観ておいた方がいいです。「はっ!!!」となるので。
こうなるだろうよ、ということはわかっていても、もう一度観て、元気をもらいたい作品です。


そして、次に『MOTHER』のお話。

長澤まさみが演じる母親が、本当にどうしようもない母親。
働く気が全くなくて、出会ったばかりの男とだらしなく関係を持つ。
小学生の息子をひとりで何日も放置したまま、男の元に行ってしまう。
実家との関係も最悪で、金の無心ばかりを繰り返し、縁を切られてしまう。
ろくでもない男と暮らすことになり、結局は夜逃げ同然に家を出ることになり、ラブホテル等を転々とする暮らしをするなか、母は妊娠する。

男が出ていき、母と息子と幼い娘三人での暮らしになるが、外で寝るような、前にも増して荒んだ暮らし。
その中でも、この息子はいつも妹思いで、まっすぐで・・・
学校にも通わせてもらえていなかったが、ある時児童相談所の支援を受けることができるようになり、少しずつ勉強を始めることができるようになった。
しかし、結局は母に振り回されることになる。
どこまで行っても、母に絡めとられていく息子。
結末は、あまりに悲しい。

実際に起こった事件をベースにしているとのことで、更に暗澹たる気持ちになる。
今、こうしている間にもこんな思いをしている子どもが、実際にいるのかと想像せずにはいられなくなる。

この母親に対して、一切の同情は湧いてこない。
実際の事件で、虐待をしてしまう親に対して「そんなことなら産まなきゃよかったじゃないか」という世間の意見はよくあるが、それに対して、「産む前には、そんなことになるなんて自分だって思っていなかっただろう」と思うこともある。

私自身、子育てをしてみて、出産直後の精神状態があれほどしんどいものだとは想像していなかったし、育児の孤独感など、ちっともわかっていなかった。
周りのサポートを受けながら、いや、受けていなくても、楽しく子育てできる人がいるのはもちろんわかっている。
でも、それを「当たり前」にされたら、余計に追い詰められることもある。それが子育て。「母親のくせに」と思われることが怖くて、一層自分を追い詰めてしまう。
そんなこともあるのは十分にわかっている。
だからといって、どんな理由も虐待をしていい理由になんてならないことも、もちろんわかっている。

そんな心理状態を踏まえたうえでも、この作品の母親に対しては「何故、産む?」と思わざるをえない。
息子はどういう背景があって出産したのかはわからないけれど、娘については、この状態でなぜその選択ができるのかが理解できなかった。

とにかく、この母親はおかしい。
病気的なことではなく、魂がおかしい。
罪を悔い改めるとか、そういうことをこの母親に一切望めないことに、この作品の絶望がある。
長澤まさみ、よくやったと思う。
本当に、嫌悪感しか抱かれない役なのに。
目がすごいのよ。
男を誘惑するのも、最後のシーンも、目の色がダー子のそれとは違うの。

この作品を観て、色々なことを感じて、そして現実の世界で何かができるかと言ったら、今、私にできることは無い。
でも、もし、このような状況を目にすることがあるとしたら、気にかけて、しかるべき機関に知らせるということはできるだろう。
それこそが、この映画の原作のタイトルの『誰もボクを見ていない』に込められている願いなのではないかと思う。
もっと多くの人の目に「ちゃんと」映っていたのであれば、あるいは違う未来があったのかもしれない。

息子役の奥平大兼くんの静かな演技がなんとも無垢で悲しくて。
妹に話しかける優しい声や、学校に行きたいと初めて主張したシーンには、胸が締めつけられます。
まだまだ子どもなのに、大人にならなくてはならなかった男の子。
重いテーマの作品でしたが、奥平くんという素晴らしい役者さんの誕生を見れたことは収穫でした。
これから、どんどん出てくる役者さんだと思います。


思いがけず、長澤まさみ作品が続きましたが、これから観る予定の方は、順番は『MOTHER』→『コンフィデンスマンJP』にすることをお勧めいたします。