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映画の話『すばらしき世界』

感想を途中まで書いて、放置していたので、今更ながらですが、
自分メモ的にもしたく・・・

映画『すばらしき世界』の感想です。
内容を簡単に言うと、出所した元ヤクザが普通の世界で生きていけるか、という話です。

役所広司はまだまだ現役で主役が張れる。それを実感できる作品。
とにかく役所広司をじっくり堪能した気分。
「ここでその表情でくるんだ・・・」という気持ちに何度もさせられた。
お約束のドヤ顔、とかは無い。
ここでこう来たら、人情的にこういう暴力も許せちゃうでしょ?ということが無い。
ほら、悪の感情は悪なんだよ、という怖さを見せてくる。
人間ってね、こういうところあるんだよ、と正直に見せられることで、よりリアルになって、引き込まれた。

物語が進むにつれ、結末は「あ、こっちかこっちしかもう無いよね」という思いが湧いてきて、進むのがつらくなってきて。


全体としては、「ルーツ」というのがポイントなのかな、と。
人生を遡って考えて、そのどこかには、些細でも誰かと繋がっていた瞬間があって、それをきちんと胸に刻めているかどうか。
それが人生の分岐点になっていく、ということなのかな、と思った。
自分が確かにそこにいた、ということが、ほんの少しでもいいから温かく思い出される一瞬があれば。


ストーリーとしては、とてもシンプル。
なんの引っ掛かりもなく、最後まで見終わってしまう感はある。
でも、所々に「ズン」とか「チクリ」とくる部分がある。
人としての寂しさ、醜さ。
そこから逃げ出さないで向き合ってこその救い、かな。
醜いものは醜いとすること。言い訳をしない。

木村緑子さん(お世話になった組長の妻)が別れ際に
娑婆の世界は我慢ばかり、だけど空が広いと言いますよ、
みたいなことを言うところが、一番ぐっときたシーンだった。
この主人公みたいな特別な生き方ではなくても。

空は、本当は広いものなのだと、私も思う。

広いんだよな、本当は・・・

そういう映画でした。