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映画の話『エゴイスト』

鈴木亮平、宮沢氷魚のラブストーリーと聞き、公式サイトを見た時の「!!!」という気持ち。
で。
観てまいりました。

鈴木亮平は、ほんとすごいね。
という気持ちがまず第一の感想。
この体格、このお顔立ちで、この役をあんな風に演じられると、もう迫力というか、説得力というか。
正直、これがリアルなのかどうかはわからないのだけど。

家の中でひとり歌いながら踊るシーンが、なんだか「踏ん張って生きている人だなぁ」と思ったり。
実家に帰った時の外見も内面も武装しているシーンについても。

あっという間に宮沢くんと恋人になっちゃうから、なぜ二人とも恋に落ちたのかがわからず。
一目ぼれなんて、そういうものさ、ということなのかもしれないけれど
「本当にお母さんいるの?浩輔(鈴木さん)、だまされていない?」とずーっと、疑いながら観ていたので、純粋な気持ちで観ていたら、もっと違う見方ができたのだろうなぁ、と思いました。

何気ない部分に、浩輔の気持ちが表されていて、なるほど・・と思う。
眉毛のシーンは自分を鼓舞している儀式なのかな、とか。
お金がどんどん減っていくから、高い梨を買うか、安い方にするか、悩むところとか、「お金」と「愛」を秤にかけているような場面がある。
浩輔の生き方は、自分の渇きを埋めてくれるものを求め続けていているように見える。

タイトルの「エゴイスト」の意味。
ひとりひとりが抱えるエゴイストな部分について、少し考えてしまった。
他人を思うようでいて、本当はそれは自分のためなのか。

氷魚くんのお母さん役の阿川佐和子がこれまたよかった。
贅沢なものは求めていない、貧乏でも強くて優しい。
すっぴんなの?と思うような肌質感がたまらなくリアルなのが、感情移入できる。
この映画のなかで、一番共感できるのは阿川佐和子。
見ていて、切ないし、でも、私も覚悟を持とう、とも思った。

家族じゃなくても、誰かと深く関わっていることの安心感。
そういう絆を描く映画が最近多いけれど、この映画は、阿川佐和子が「よくあるやつね」という気持ちにさせない。
断る、だけどやっぱり受け入れたい、助かりたい、誰かといたい、いろんな自分の中の入り混じる欲をふるいにかけたら、最後に何が残るのか。
そんな気持ちになる。

悲しいのに、いろんな感情をもっと優しく受け止めていいのだ、と許しを得たような思いで映画館を出た。