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その11 エチュード Jazz Sax:アドリブ練習の目的別構造化

 今回は「コンボ練習」を書いてセッションをDisろうと思っていたのですがwちょっと頭を冷やして③のハコの中にある「エチュード」について思うところを書いてみたいと思います。

11.1 エチュードとは何か

 手を抜いて、今回もまずはAIさまに聞いてみた。

質問:音楽教育におけるエチュードとは何でしょうか。
回答
エチュードとは、楽器や歌の演奏技巧を修得するための楽曲のことです1。エチュードは、フランス語で「学習」の意味があります。エチュードには、機械的な練習を目的としたものや、音楽作品として充実した内容を持つものがあります。音楽教育において、エチュードは、基本的な演奏能力を向上させるために重要な役割を果たします。

Bing AI

 まあ、回答の通りで「演奏技巧を習得するための楽曲」ということであるが、よく考えると不思議で「人前で演奏することを前提としていない楽曲」
ということになる。ピアノでいうと、バイエルとかチェルニーとか、フルートだとアルテス教本などというのがあるのかな。

(1) クラシック音楽にとってのエチュード

 さて、突然だがクラシックとジャズに分けて「目的志向」でエチュードの意味を考えてみたい。
 クラシック奏者の最終的なゴールとしてまず考えられるのは、その楽器用に書かれた「名曲」を演奏することになるだろう(他にもあるかもしれないけど一旦無視する)。例えばピアノでいえばショパンとかリストとか。さすがに、いきなりそれに取り掛かるのも無理なので、段階的にエチュードを練習することにより、ピアノの技巧、音楽表現を学んでいくというプロセスが確立されていると考えられる。

 それを前提として、改めて、エチュードを学習する目的をリストアップしてみる。

  • 楽譜の読み方(強弱記号なども含め)を学ぶ。

  • 運指を学ぶ。特に難しい運指を練習する。

  • 楽譜の解釈と表現方法、「唄い」方を学ぶ。例えば、強弱記号、クレッシェンド、スラー、スタッカート等々。

  • 演奏のための持久力・耐久力を付ける。

 指導者からの指導の下、エチュードをある程度確立された順番で消化して、上記それぞれのレベルを上げていき、最終的目標に近づいていくのが一般的だろう。また、エチュードにしても、バイエルのような楽曲形式のものと、技巧の習得に特化したハノンのようなものの両方がある。それなりに進んでいくと、ハノンはいわゆる「基礎練習」として個人で取り組み、指導者には楽曲形式のエチュードの指導を受ける、ということになるのだと思う。

(2) 管楽器ー特にサックスーにとってのエチュード

 上記はピアノの例であったが、管楽器に関してもそれぞれの楽器の特性に合わせたエチュードは存在するし、ピアノと同様に、テクニック系と楽曲系に分かれると思われる。特にトランペット等の金管楽器は倍音を用いた音程コントロール、ブレスコントロールをスムースに行うためのエチュードはポピュラーだろう。
 さて、肝心のサックスに関するエチュードも相当数存在する、と思う。思う、と書いたのは私が知らないからだ。なぜ知らないかというと、その手の練習をしていたのが50年近く前でwすっかり忘れてしまっているからですな。というわけで、またAIさんに聞いてみた。

質問:サックスの上達に役に立つエチュード、教本を教えてください。
回答
サックスの上達を促すために役立ついくつかのエチュードや教本をご紹介します。以下のリストは一部であり、さまざまなレベルやスタイルに合ったものがありますので、ご自身のニーズや好みに応じて選んでください。
1. "48のエチュード" - フェルディナンド・ダヴィッドによる有名なエチュード集です。テクニカルなスキルを養うのに役立ちます。
2. "ヴォクサマ" - マルセル・ミュールによる有名なエチュード集です。息継ぎやテクニック、音楽的なフレーズへの取り組みが含まれています。
3. "パターンシステム・オブ・ジャズ・インプロビゼーション" - ランディ・ハルバートによるジャズ演奏に特化した教本です。ジャズのスタイルやフレーズの構築に役立ちます。
4. "ハイトーン・スタディ" - シグルズ・ヒエックによる高音域の技術を開発するためのエチュード集です。高音域の制御や安定性を向上させるのに役立ちます。
5. "テオバルト・シャンゼの演奏法" - テオバルト・シャンゼによる演奏法の教本です。サックスの基本的なテクニックや音楽性の向上に役立ちます。

これらの教材は一般的にサックス奏者によって推奨されていますが、個々のプレイヤーのスキルレベルや好みに応じて最適なものが異なる場合があります。また、サックスのレッスンを受けることも上達に役立つので、教師からのアドバイスや指導も重要です。

Chat GPT、太字は筆者

 うーむ。やっぱり知らないww。それぞれの解説によれば、1,2,5がクラシックサックス向け、3がジャズ向け、4がアルティシモ(フラジオ)に特化したエチュードなのかな。
 あと、最近Twitterのサックス初心者関係で話題になるのは「ラクール」っていう教則本ですかね。原題は"50 Etudes Faciles et Progressives"というらしく、特にサックス初心者向けに作られたエチュードのようです。

(3) 「ジャズ」サックスにとってのエチュード?

 さて、ここで改めて、ジャズサックスにとってのエチュードの役割を考えてみる。
 「名曲を弾ける(吹ける)ようになる」のが目的のクラシックとは違って、本稿では「ジャズのアドリブが吹けるようになる」ことを目的として設定している。
 ここで思い出すのは、以前「その2」で書いた通り「クラシックサックスとジャズサックスでは音の出し方、奏法が大きく違う」ということ、また、「その3」で触れた「ジャズは独自のアーティキュレーションがある」ということだ。よって、エチュードの練習をやるにしても「ジャズの音の出し方、奏法、アーティキュレーションを学ぶ」ためのエチュードである必要があるということだ。
 逆に、極端にクラシックにチューニングされたエチュードは(やっても罰は当たらないと思うが)、あとから、そこで学んだ奏法やアーティキュレーションを修正する必要があるとすると、練習効率という意味ではあまりよろしくないかもしれない。そう考えると、無理にエチュードやらなくてもいいような気がしてくるw なんかすみません。

11.2 ジャズサックスのエチュード:お薦め(?)

 とはいえ、やはり是非エチュードをやってみたいという人もいるであろうから、上記の観点からのお薦めをいくつか挙げてみたい。

(1) ラクール(をどう考えるか)

 なぜか、日本のサックス初心者に大人気になっているらしい「ラクール」であるが、あきらかにジャズ向けでは「ない」ため、私としてはあまりお勧めはしない。とはいえ、楽器を始めたばかりで、読譜もおぼつかないという人が、1) 簡単な譜面であり 2)お手本が世の中に多数存在する、という意味で、取り組むことは否定しない。サックス教室等で、先生から勧められる(というか、カリキュラムに入っている)場合は、先生に自分の最終的な目標「ジャズサックスのアドリブを吹く」というのをきちんと伝えたうえで、双方納得ずくで始めるのがいいと思う。機械的に「とにかくまずはこれやるのよ」 みたいな感じだと、奏法やアーティキュレーション関係で、あとで混乱する可能性がある。
 当然、クラシックサックスを目指す人、あるいは、ジャズじゃなくて「吹いてみた」系の演奏を目指すという人については、実にいい教則本ではないかと思う(自分でやったことないからあまり断定的に言えないが)。

(2) じゃあ何かお薦めがあるか

 正直、私としてはあまりこの手の練習をしたことが無いので、何とも言えないのだが、やはり、ジャズの奏者がジャズ専用に書いた曲集が良いだろう。その意味で、たまたま手元にあるBob Mintzer先生のエチュードはいいかもしれない。ポイントは、Mintzer自身の模範演奏とカラオケ音源の入ったCDが付属していること。それを聴いて真似できるというだけで、ジャズのアーティキュレーションや音使いを理解し、身に付けるには非常に良いと思う。初心者にはちょっと難しいかもしれないが、コピー練習に比べると易しいし、模範演奏がわかりやすくて素晴らしいので、取り組む価値はあるかも。とはいえ、やはり一人で頑張るより、誰かジャズのできる人に聞いてもらって、ポイントを抑えてもらった方が良いだろう。

 これは収録楽曲の例。初心者には難しいか。

 このシリーズはもう少し難しいのもある。っていうか、こっちがまず最初に出版されたような気もする。この譜面がちゃんと吹けたら間違いなく中級者だろう(私は吹ける自信なし)。ここら辺まで来たら、素直にトランスクライブーコピー練習に取り組んだ方が良いという気もするが。

 他にも、評判のよさそうなもので、これかな。アルトのジムスナイデロの書いた練習曲集。これもCD付きみたい。見たことないので態度保留。

 アマチュアの人がこの中の曲を演奏している映像があった。Bob Mintzerのエチュードより易しい感じで、典型的なジャズのリズムやアーティキュレーションが分かって、結構良いかもしれない。

 他にも、日本のサックス奏者が書いたCD付きの本というのはたくさん世の中にあるようだから、好きな奏者の書いたものをチェックしてみるのは悪くないだろう(私はほとんど触れたことが無いのでわからないが)。何かお薦めがあったら皆さん教えてください。

11.3 まとめ

 以上、なんとなく煮え切らないまま書いたが、何となくの結論として、

  • ジャズサックスに関しては、楽曲系エチュードの練習は必須ではない(運指やスケール、アルペジオ等に特化したいわゆるパターンの練習のための教則本(例:Patterns for Jazz)は必要)。

  • やるとしても、出来る限りジャズのリズムがベースの楽曲で、アーティキュレーションやグルーヴを学ぶ(真似して覚える)ことができるものが望ましい。

  • 可能であれば、ジャズの吹ける人の指導を得ながら練習することが望ましい。指導がなければ、模範演奏の音源が存在し、真似をしながら吹けるような教材を選ぶことが最低限必要だろう。

 みたいな感じですかね。なんとなくモヤモヤが晴れませんが、今回はここまでで。

その12はこちらから。

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