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ウェイン・ショーター:無重力の世界(原題:Zero Gravity)を観る

 2023年8月25日、存命であれば90歳の誕生日に、ウェインショーターの評伝映画、「無重力の世界:現代 Zero Gravity」がAmazon Primeで公開されました。簡単な感想をFacebookに書いたので、こちらにも記録しておきます。


1. 構成

 今回は映画というよりシリーズものなんですかね。1時間前後のエピソードが3本。エピソード1と2は典型的な評伝映像で、生誕から2000年ごろまでのショーターの歩みー音楽的なものと、いわゆる人生イベント的なものの両方ーをほぼ時系列で描いています。工夫された映像で観応えはあるけど、基本的には以前出版された評伝本とかで知っている内容が中心。
 で、エピソード3が2000年代以降、という建付けなんだが、このエピソード3だけ、ちょっと作り方が違う。評伝というよりは「アーティスト ウェイショーターの現在」的で「プロフェッショナル仕事の流儀」だとか「情熱大陸」とかに近い。例のカルテットのリハや演奏風景、メンバーの発言、ジャズジャイアンツの評伝映画では常連のハービーハンコック、ジョニミッチェル、さらにはロリンズ(!)あたりの大御所発言、そして、ご当人の言葉もふんだんに使われていて、非常に興味深く観ました。
 詳しくは実際に観てもらうとして、面白かったのは2014年ごろのカルテットのコンサート、少なくとも欧州ではオーディエンスに10代、20代の若い人が大量に来ていたという話。伝統芸能ではなく、伝説のアーティストが演奏する「最新の、かつ得体のしれないジャズ」に若い人たちが反応していたということなんだろう。2014年と言えば、私も渋谷にこのカルテット観に行ったけど、日本ではどうだったんだろうか。そこまで若い人はいなかったような気もするけど。
 あと、エピソード3の最後に、私の聴いたことのない、ということは、(多分)まだリリースされていない、伝説の「オーケストラとのオペラ作品」の演奏シーンがあったこと。これはいろんな意味で泣きそうになりました。あのコンサート映像はこれから別にリリースされるのだろうか。楽しみです。

2. 感想

 さて、全体を観ての感想。月並みですが、改めてウェインショーターという人は、いろんな意味で相当変わったーWiredなー人だったんだろうなあ、と思いました。「宇宙人みたい」という表現も何度か出てきましたが、まさにそんな感じ。
 言い換えるとやっぱり相当なレベルの"Gifted Person"だったんだろう。別にジャズサックスじゃなくても、クラシックでも、なんなら絵画でも、もしかすると文学や哲学でも、俗人のできない何かを成し遂げることができる人だったように思います。そんな人がジャズを、その中でもサックスを選んでくれたというのはジャズサックス吹きとしては、感謝しかありません。
 というわけで、ちょっと長いけど、ジャズ演奏される方(じゃなくてもいいけど)でAmazon Prime観られる人は是非お試しを。特にエピソード3は必見かと思います。

3. おまけ情報

おまけ1

 この作品、なぜかあのブラッドピットが制作総指揮で金出して作られたらしい。映像の中にはまったく出てこなかったけど、生前、何かしら関係があったのか、それともブラピがショーターのことを一方的に尊敬しているのか、あるいは、何かほかの理由(あっちとかw)があるのかw

おまけ2

 あっち関連は、いわゆるライフイベント的には出てきましたが、必然性が感じられる表現に留まってますのでご心配なく。ちなみに固有名詞は出てきませんでしたw

おまけ3

 ジャズサックスの演奏スタイルという意味での切り口はあまり出てこないので、ぜひ私が以前書いた「ウェインショーター研究」で予習または復習をww この映像と同じく時系列で書いているという意味では、それなりに参考になるかと思います。コメント欄にリンク張っておきます。

映像へのリンク、なんか上手くいかないですが、とりあえず張っておきます。リンクしなかったらAmazon Primeで見つけてみてください。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0BX3YT161/ref=atv_dp_share_cu_r

こちらは、私のウェインショーター論へのリンク。ぜひサイドテキストでご活用ください。


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