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JKリフレに行ってみた話


10年くらい前に、JKリフレのお店に客として入ってみたことがある。

秋葉原と末広町の間の道を歩いていたら、制服姿でチラシを配っている女の子と目が合ったので、話しかけた。
普段は新宿で女性に引きずられるホストとすれ違ったり、渋谷の坂道で酒を片手に持ちながらゲロを吐き散らかしたりしていたので、秋葉原は行儀が良い街に見えた。

「なんのお店?」と立ち止まると、「マッサージとかお話とか」とチラシを見せて教えてくれた。
「女だけど入れる?」と訊いたら、ニコニコ笑って頷いてくれた。
かなり前のことなので金額等の細かいことは覚えていないのだけれど、お話30分5000円のコースを選んだと思う。

チラシ配りの子がそのままついてくれた。
簡易的な壁とカーテンで区切られた個室に入り、お菓子を置いたテーブルを挟んで女の子と向き合って座った。壁もカーテンも灰色だった気がする。
その子は女子高生らしい。そういう設定だったかもしれないけど、メイクをバッチリしていて大人っぽくは見えるが笑うとあどけなかった。頬の一番高いところにえくぼが現れる笑顔だった。まだ子供だと思った。
私は「変なお客さんとか来ないの?」と“お話”を始めてみた。
「めっちゃ来ますよぉ、キモイのばっかり」とその子は笑っていた。
笑うたびに、口の隙間から食べていたお菓子が私の顔に向かって飛んできた。
よく笑う子だった。よく飛んできた。

押し売りや強引な勧誘があるかもしれないと少し警戒していたけど、本当にお話をするだけで、すんなりとお会計できた。
お金のやりとりは男性のスタッフとした。
色黒のツンツン金髪で、ゴツメのネックレスをした、それはもう、それらしい男性だった。
女の子は笑顔を絶やさず手を振っていた。最後まできちんと仕事をしていた。

数週間か数か月経った頃、その色黒ツンツン男性が逮捕されたというニュースをネットで見た。
見覚えのある男性が大人に連行されている映像が携帯の画面に映った。
あの日と同じ髪型・服装をしている気がした。
私が行ったあの店で、男性客に「キャストの体に触っただろ」と脅し、お金を要求したらしい。
女子高生も数名補導と出ていた。
あの子は大丈夫だったのだろうか。

この話は何回か、誰かにしたことがある。酒の肴のようなものとして。
必ず「何でその店に入ろうと思ったの?」と疑問を持たれる。
「可愛い女の子が好きで」と適当に答えてきた。
今考えると、重ねて見ていたのだと思う。自分と重ねて、見た。
全く似ていない。同じところは無い。ただその年齢を過ごした経験があるということだけで、いちいち引っかかった。
それはずっと続いている。

未だに制服を着た女の子とすれ違うと、思い出さずにはいられない。
かつての私と、あの子のツヤツヤな頬にあるえくぼと、飛び散るお菓子の破片を。

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