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DV現場に遭遇。そのときの子供の表情は…

男「お前!本当ひどいぞ!!」
子供「お父さん!もうやめてー!!」

5年ほど前、沖縄の観光スポット「国際通り」の裏道のほうから怒鳴り声と子供の泣き声が聞こえたので少し気になり様子を見にいくと、そこには父親と母親、そして小学5~6年生くらいの男の子と小学1~2年生くらいの女の子がいました。

先ほど聞こえた怒鳴り声は父親から母親に向けられていたようで、母親は地面に転がり込んであり得ないほど強い悲しみの表情をしていました。そこに恐怖や嫌悪、怒りも存在せず、絶望と苦痛に満ちた表情。顔や体に目立った外傷は見当たりませんでしたが、心から血を流していることが瞬時に理解できるほどの光景でした。

女の子は母親にすがり、母親の服を強く握りしめて「お父さんもうやめてー!」と泣き叫び、父親の鋭い眼光は母親からそれることはなく、そして男の子はどうすることもできず、ただただ「わぁーーー!」と父親に向けて泣き叫んでいる状況。

とりあえず、何があったのか確認するために「どうかしましたか?」と声をかける。しかし、「部外者は黙ってろ!」と体を強く押し返されました。(そのとき一瞬こちらを見るが、すぐに母親に視線を戻す)

下手に刺激すると危ないと感じたため、少し後ろに下がりできるだけ情報収集を試みる。

後ろ姿の父親は表情を確認できないが強い握りこぶしを作り、エラに力が入っているのが分かる。強い怒りだ。歯を食いしばってエラが張っているのであれば「堪えている怒りの可能性」がある。怒りが再度爆発する可能性はあるが、この状況が終わりに向かっているかもしれない。しかし、アゴが前に出てエラが張っている場合は「攻撃的な怒り」のため、状況はさらにエスカレートする可能性がある。どちらにせよ一触即発だ。

母親は言葉にできないほど深い悲しみの表情。突発的に起きたことなら、何が起きたのかと驚きと恐怖の表情が混ざるはず。しかし、そのような表情は確認できず深い悲しみと絶望と苦痛の表情。このような状況は慢性化しているのかもしれない。そして、母親は誰とも目線を合わさず内側にこもり希望を持っていないような雰囲気。ここでおかしい点に気付く。「お父さんやめて!」と自分の服を握りしめる娘にも目線を合わさない...。下手をすると娘も暴力に巻き込まれるかもしれない状況で。娘を守るために覆いかぶさったり、大丈夫だよと安心させるためにアイコンタクトを取ってもいいはず。しかし、それをしない。それどころか目線すら合わさず体を丸めて嗚咽している。

…もう少し情報が欲しい。

時が止まるほど集中し細かく母親を見る。…かすかに目線が左右に動いたり…何かを考えているような”間”がある。「何かを計算している」かもしれない。精神的に限界を迎えて本当にただ泣いているのであれば計算をする余裕はないはず。…子供には暴力を振るわない?
ターゲットは母親のみなのかもしれない。もしかすると、希望や甘えといった何かに縋る(すがる)ところを見せると父親の怒りを誘発させるのかもしれない。子供をかばうようなことをすると「子供は関係ない!お前だ!分からないのか!」とさらにエスカレートするのかもしれない。「自分が悪いということを自覚しているように見せ、精神的限界を迎えているように見せること」これが母親の最大の防御の可能性がある。

次に子供を見てみる。娘と息子は同じように恐怖と悲しみの表情をしているが、息子は握りこぶしを作っている。視線は父親。息子は父親に対して怒りを感じているようだ。そして、服装にも特徴がある。父親は半袖のシャツと長ズボンで遊びがなくきちんとした服装だが、母親は麦わら帽子にロングスカートで南国をイメージさせるような色とりどりとしたおしゃれな服装。そして、娘もお姫様のようなかわいらしいスカートで、息子は七分丈ズボンにスポーツシューズ。元気な男の子をイメージさせる服装。明らかに子供の服装は母親の視点で選んでいるように見える。おそらく父親は身だしなみなど世間的にどうみられるのかはあまり重要ではないのかもしれない。

もしかすると、この父親はストイックな性格で自分自身に対する厳しさを妻にも強制し「それぐらいもできないのか」と激怒してこのような行動を起こすのかもしれない。酒に溺れ自己否定感が強く急に癇癪(かんしゃく)をおこすようなパターンのDVは少しだらしなさと影がある。この父親はそういった雰囲気は一切ない。背筋が伸び小柄だが体つきはしっかりしていて、髭もきれいに剃られ清潔感があり、だらしなさは一切感じずシャキッとしている。

父親の「お前本当にひどいぞ!」とは「これぐらいもできないのか」という意味で、母親が子供をかばったり助けを求めたりしないのは、罪の意識を感じているように見せるため、そして、娘の「お父さんもうやめて」は娘にとっては単純に「暴力をやめてほしい」という意味かもしれないが、父親からすると「お母さんを許してあげて(もう反省している)」と解釈することもできる。慢性化したDVならば、沈静化するために母親と子供はベストな行動や発言をするはずだ。少し飛躍した分析になるが、一旦この認識でいく。

そして、沈黙を破るように父親が「本当お前いい加減に…」と全身に力を込め少し前かがみになった。子供たちは全力の力で「やめてー!!」と悲痛の叫びをあげる。これ以上叫ぶと声帯が壊れるほどの声量だ。

止めないと…!!そう思いフルスピードで声をかける言葉を考える。

・「子供がおびえている」
このような理由で沈静化できても「誰かが助けてくれるという甘えをもった」と父親が解釈すれば後々さらにDVはエスカレートするかもしれない。

・「警察を呼びますよ」
これで沈静化できても後々「警察沙汰になりそうになったのは誰のせいだ!?」と攻め立てるかもしれない。しかし、最後の手段としては有効。

父親にかかったプレッシャーはすべて家族に向かう。この場を収め、なおかつ母親や子供たちに負担をかけない言葉。次の段階に進む前に限られた時間の中で自分が導き出した言葉は、「もういいでしょう、もう終わりにしましょう」という言葉でした。父親にも寄り添い「少しやりすぎたかもしれない」という気持ちに傾く可能性もある。これ以上時間をかけることもできないし、この言葉が自分の限界でした。

タイミングを見計らい父親に「もういいでしょう…」と手を差し伸べたそのとき、「わーーー!!」と男の子が父親と自分の間に割って入ってきました。手を広げこちらを睨んでいます。一瞬何が起きたのかと驚き男の子の表情を見ると怒りの表情をしていました。「余計なことをするな」という意味かと思い、後ろに下がり両手の手のひらを男の子に見せて悪意はないことをアピールする。

しかし、男の子は睨みつけることをやめない。近づくなと言っているように見える。そして、女の子は自分の顔を見て泣きながら手のひらを反らせている。手のひらを反らせるのは「やめて」という意味だ。

※「やめての仕草」参考画像

「これ以上状況を悪くしないで」そういう意味かと思ったが、なにやら様子が違う。もし、状況が悪くなることを懸念するなら父親の顔色を伺うはず。しかし、子供たちは一切父親の顔色を伺わない。むしろ、自分に対しての拒絶反応と怒りを感じる。

とりあえず、安心させるために少し離れどういうことか考えたとき、「あぁ…」と理解しました。これは「家族を守ろうとしている」のかもしれない。父親に危害を加えないで、私たち家族に触れないで。子供たちからすると「男性の大人は暴力をふるう可能性がある」という認識があってもおかしくない。

いつもそうだ。

虐待されていようが暴力を振るわれていようが、子供はどんなことをされても親や家族を守ろうとする。そこに条件は存在しない。無条件の愛、何があっても家族を守ろうとする姿勢。そのような心は子供たちから見習うべきだ。

「…いつまで座り込んでいるんだ」父親が母親に声をかける。どうやらこの状況は終わりを迎えるようだ。少し子供たちの緊張もほぐれたのが分かる。男の子の表情も落ち着きもう自分を睨んでいない。そして「すみませんでした」と自分に頭を下げ謝罪した。…えらい!泣きそうになるほどしっかりしている。

「もう終わりだ。お前らも泣くのをやめろ」と父親が子供に声をかける。女の子の表情は確認できなかったが、男の子の表情は唇を上下にプレスし口角が下がっている。これは悲しみと怒りが混ざった「悔しさ」の表情だ。

※「くやしいの口元」参考画像

もしかすると男の子は「何もできない自分」に悔しさを感じているのかもしれない。ここで少しでも怒りを感じることができるのであれば、もっと状況をよくしたいという気持ちがあるということだ。心は折れていないが、無力感を感じている。

父親が見ていないなかで「大丈夫、君自身を信じて」という意味を込めて男の子に向かって数回少し頷く。男の子も自分に目線を合わせて同じように数回頷いてくれた。

ゆっくり歩いていく4人家族の後ろ姿を見ながら、集中しすぎたせいか足と指先の感覚がおかしくなり地面を踏んでいないような感覚になった。頭皮全体と歯が痺れて極度の空腹感にも襲われました。

何が正解か分からず、もっと他にできることがあったのではないかと今でも思い悩みます。

警察を呼び父親と引き離した方がよかったのかもしれないけど、家族がそれを望んでいないかもしれない。突発的な出来事で大したことができず、自分の無力さを感じる出来事でした。

簡単に関与できない難しい問題だなと思います。
もし、専門的な知識がある方がいましたらご教示いただけると嬉しいです。

では、今回はこのへんで…
さいごまでお付き合いいただきありがとうございました!

ドキ(✱°⌂°✱)ドキ