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【短文レビュー/邦画新作】『ナミビアの砂漠』山中瑤子監督・・・強くて逞しくなくては女性がまともに生きるのも困難な現代社会

トップ画像:(C)2024「ナミビアの砂漠」製作委員会

監督&脚本:山中瑶子
配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:137分/公開日:2024年9月6日
出演:河合優実、金子大地、寛一郎、新谷ゆづみ、中島歩、唐田えりか、渋谷采郁、澁谷麻美、倉田萌衣、伊島空、堀部圭亮、渡辺真起子

まず第一に、強くて逞ましい女性の話である。そして同時に、強くて逞しくなくては女性がまともに生きるのも困難な現代社会の話でもある。河合優実演じる主人公・カナの全方位的な攻撃性は、周囲の男どもがステレオタイプで情けないのもあり快活に思える。だがそれは、どうしようもない社会を生き抜くための防御としての攻撃性なのである。映画の冒頭、駅前の雑踏を歩きながら首筋にクリームを塗っているカナの姿は、混沌とした社会から身を守る様子そのものだ。キービジュアルでも印象付けられる鼻ピアスもまた同じ意味であろう。物語が進むにつれてカナは身体的にも精神的にも押し潰されそうになるが、その状況すらも逆手に取って、なんとか優位に立とうと奮闘している。

劇中では何度も、ひとりになった瞬間に解き放たれたかのように無防備になるカナの姿が映される。それはナミビアの砂漠で水場に立ち寄ったかのような、ひとときの休息の瞬間であり、どうしようもない実際の社会の中にいる観客もまた、その姿に束の間の癒しを施されるのである。

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