中国の歴史 一

 陳舜臣先生の描く中国の通史です。そそりますね。
 このシリーズ、全七巻のうち最初の一巻だけは電子なんですが、残りは紙媒体という謎な買い方をしてしまいました。ちなみに僕は紙媒体のが好きなんですけど、本棚の容量がヤヴァイのでここ二、三年はずっと電子で買ってます。最近、発行画面の見過ぎでドライアイ気味だったんで紙で読めるのはうれしいですね。

 さて、一巻は考古学、あるいは神話の時代から孔子前後まで。陳舜臣先生は考古学の説を紹介しつつも、あくまで神話を尊重する形で歴史を解釈されているので面白いですね。
 ただ、考古学関連のところは最新の情報が欲しいので、また別に本買って読もうかなと思った次第。夏と殷のイメージは曖昧なまま残っているので、そのあたりもしっかり調べていきたいです。

 具体的な叙述が多くなるのは周から。儒者がユートピアとする時代ですね。周は信仰対象としての“天”という概念を確立し、封建制をはじめたことが特色です。殷の神人雑居に対し、周は“鬼神は敬してこれを遠ざく”、敬いはするが距離は置くという、バランス感覚のとれた信仰の仕方です。一神教ではないので政教分離をことさら強調することはありませんが、一歩近づいた感じはあります。

 殷の時代は支配下の部族を直接支配していたようですが、周は親族を土地に封じて都の守りを固めています。のちに始皇帝が郡県制を敷き、帝国をすべて直轄領としますが、殷はそれに近しい政体だったのかもしれません。ただし、具体的な情報がないので、直轄と封建を比べるときに参考にできる事例、という意味では周と秦が最初です。これの折衷案をとったのが漢ですね。

 春秋戦国時代の区切りをどこでつけるか、という論争は多いです。私は歴史を愉しみとして読んでいるだけで細かな学説を見る気はないので、よく言われる紀元前403年で覚えていたました。けれど、どうやら孔子の生きた時代が時代の潮流の変わり目のような気はします。思想家が集団を成し、呉が台頭してきた時代です。

 思想家が集団を成したことがのちの百家争鳴へとつながりました。稷下の学士たちが議論を戦わせたことで学問は発展。法家思想もまた体系化されます。始皇帝が韓非子を読んで感動しましたが、韓非子こそ法家の大家。韓非子の師匠は荀子であり、荀子は孔子の継承者を自認していましたので、やはり思想界隈における孔子の影響力は甚だしかったというべきでしょう。

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