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春めく季節に浮かされて(400字の小説)

春めく陽気に誘われて、一匹のカエルが目を覚ます。
でも、もう一匹は目覚めない。
「おい、もう春みたいだよ。起きろよ!」
と、揺り起こしを試みる。
だが、全く目覚めない。
「仕方ないな〜、僕だけ外に出てみるか?」
と、土の布団から顔を出す。
「暖かいな〜。やっぱり外は気持ちが良い。
土の中に潜っていても、楽しくないよ」
嬉しそうに、ぴょんぴょんぴょんと、
跳ねながら土手を行くカエルが舞踊る。

「何故みんなは、起きて来ないのかな?
もう、春なのに!」
道行く人間達も、上着を脱いで闊歩する。

春は、人々を活気付かせる。

「奇妙だな?春なのに、桜が咲いてないぞ!」
と、訝かるが、
暖かさが一匹のカエルを浮かれさす。

だけど、この暖かさはこの週だけ、
猛烈な寒波が地球を襲う。
哀れ、カエルは身体が冷えて動けない。
「寒いよ、寒いよ。お母さん助けてください!」
と、言っても、もう遅い。

可哀想にカエルは、凍え死ぬ。

異常気象は、動物の生態もカエル。


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