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見つからない言葉(3)(320字の小説)

見つからない言葉を探している人が居る。
何処を探しても見つからない。
「一体何を探しているの?」と訊ねても、
応えは無い。

そもそも、言葉は物では無い。
人の声が言葉になるだけ。
出しては消えていく儚き物。
なのに彼は探し求めている。

彼は孤独な男。
彼が愛した妻は三年前に他界し、
息子達もこの前の地震の犠牲者になった。
それ以後の彼は、
言葉を掛け合う相手も居なくなった。
孤独を紛らす為に、彼は妻に話し掛ける。
だが、妻の返事は当然ながら聞こえてはこない。
生前遺した妻との映像、写真を
見ては涙ぐむ彼。
いつしか彼は、妻の遺した言霊を探しにいく。

彼は、ポツリと言った。
「言霊は必ずあるはずだ!きっと何処かにあるはずだ!」


妻の遺した言霊を求めて、今日も彼は彷徨い歩く。


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