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(新々)三つ子の魂百までも(後日談2)

後日談2
放送の内容は、[竹村健二が単身でビデオカメラを持ち、
ビル内に入り4階まで上がる。
そして問題になっている壁に自分の名前を書く]
この様な構成で生放送された。

視聴者は固唾を呑み真剣に観ていた。
僕も、一人部屋で観ていた。
竹村健二さんの勇気に脱帽の想いであった。
この様な勇気があるから、危険な戦場にまで足を運ぶ事が出来るのだろう。
そして真実をレポートしたいと云う
精神を持った本物のジャーナリスト。
それが竹村健二さんだ。

初めて見た時の印象とは大きく変わり
僕は竹村健二さんを尊敬の眼差しで
テレビを観ていた。
…竹村健二さんに何事も起こらなければ良いが・・・…
と、僕は心配していた。
何も起こらない方が良いのだが、起こらなければ、
私達の敗北となる。
複雑な矛盾した気持ちであった。
放送は無事終了し、何事も無く終わる。

そして、次の日を迎えても竹村健二さんに何事も起きなかった。
次の日もそして次の日も竹村健二さんは無事だった。

勝利宣言をする竹村健二。

裕美さんは、冷ややかな目でテレビに映る
竹村健二さんを観ている。

桜町は敗北を認めたのか沈黙している。

ネットのコメントは盛り上がりをみせた
「あの記事はガセネタか!」
「いや、いつかの日か呪われる!」

竹村健二さんの勇気を賞賛する声や、
「そんな危険な所に入るのは、売名行為だ」と、
罵る声。様々なコメントでネットは大炎上している。

桜町は悔しかった。
悔しくて、悔しくて仕方無かった。
東西出版社に毎日届く批判、誹謗中傷の手紙。
ネットでの様々な批判、中傷の書き込み。
それが桜町をさらに苦しめた。

桜町は、竹村健二の過去を調べ出した。
ジャーナリストの竹村は本当に勇気ある
人物である。
どこを探しても欠点など無い。

新聞社で働いていた頃の竹村も
若手の有望社員。
優秀、有能な社員であった
…何故、優秀な記者であった竹村が、新聞社を突然辞めたのか?……
その疑問を解決すべく、桜町は調べた。
そして解った事は、
あのビルで起こった殺人事件の犯人と
竹村健二は、父親違いの兄弟。
あの殺人犯奥田民生の弟であった。

…この事が原因で、竹村健二は新聞社を、
辞めざるを得なかったのだわ…
と、納得した気持ちになり、
何も起きない理由も、理解できる桜町であった。
…父親違いとは言え、弟を呪え無いね。竹村健二はその事を知っていて、殺人犯の兄が怨霊でも地縛霊でも無い事を、命を懸けて証明したんだわ。……

都市伝説の話題は結論の出ないまま曖昧に終わり、
人々の関心が薄れて来た時に
突然の訃報のニュースが飛び込んでくる。

「竹村健二さん、戦禍の中での取材中に爆撃を受け死亡」
爆撃の被害はかなりの物であったが
爆撃を受けて死んだのはただ一人。
竹村健二さんだけ。

怪我人も誰も居ない。
何故、竹村健二さんだけが亡くなったのか、不可解な事件と報道されていた。



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