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アヤ・ワキゾノはサイコウだ -1003

新国立劇場2021/2022シーズンの開幕は新制作のチェネレントラ。久々の外国人キャストも入れたイタリア・オペラへの期待感からか、客席はほぼ満席

指揮/城谷正博
演出/粟國 淳
合唱指揮/三澤洋史
合唱/新国立劇場合唱団
管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団
チェンバロ/根本卓也
美術・衣裳/アレッサンドロ・チャンマルーギ
ドン・ラミーロ/ルネ・バルベラ
ダンディーニ/上江隼人
ドン・マニフィコ/アレッサンドロ・コルベッリ
アンジェリーナ/脇園 彩
アリドーロ/ガブリエーレ・サゴーナ
クロリンダ/高橋薫子
ティーズベ/齊藤純子

メゾ・ソプラノの脇園さんは、コロナ禍での同年代声楽家とのYouTube対談を拝見してから気になっていた方のお一人

今回初めてライブで聴くことができて、とても魅了された!
弾ける音の粒が見えるかのように明るく軽やかな六重唱、陰影に富んで貫禄すら漂う「苦しみと涙のために生まれ」など、芯の強いチェネレントラにピッタリの歌唱力・演技力。
虐げられているときの前掛けと、終盤のドレスがどちらも黒×ピンクで、同じ色を纏う(根本は変わらない)けれど気品が加わるというアンジェリーナの変化を、衣装のみならず歌でも表現していたと思う。

こちらのインタビューで、ミラノ・スカラ座での経験が「私の復讐は彼らを許すことです」の理解につながったということ、天にいるロッシーニに「こんな状態で歌ってしまってごめんなさい」と語りかけたら、「それでいいんだよ。完璧じゃないからいいんだよ」という声が聞こえてきたということ。どちらも彼女の歌を聴くととても納得ができて、なんて心を乗せるのことできる方なんだろう!と、イタオペなのに、悲劇ではないのに涙ぐんでしまった。

考え抜いた言葉ですら相手に伝わらないことの多い中、言葉が届かない部分まで雄弁に語ってくれるのが芸術の好きなところなのだけど、その意味で脇園さんという芸術家に惚れ込んでしまった3時間だった。

もちろん、チネチッタ風の舞台(序曲だけ使われた字幕はトーキーのようで面白かったので冒頭だけだったのが惜しい)と衣装もバルバラ(アンコールありがとう!)も素晴らしかったけど、今日は世界のワキゾノに脱帽だ。

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