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2020年広島カープ総括

2020年のNPB全日程と表彰発表が終了。今年の日本プロ野球を、小学生時代からの広島カープファンとしての立場から総括したい。広島カープはセリーグ第5位に沈んだ。2年連続のBクラスである。丸ロスの有無については意見の分かれるところだが(自分はあると思う)、目立ったのは中継ぎと抑えの投壊でリードしても守れない。3連覇の頃は「逆転のカープ」だったのが、去年からは「逆転されるカープ」になった。序盤は好調だった打撃陣も、負けが混むに連れて調子を落とし、日本の4番と言われた鈴木誠也ですら代打に回ることすらあった。セリーグ全球団のうちで、唯一個人タイトルがない球団にもなった。
 そんなカープ最大の光明が、新人・森下暢仁の最優秀新人賞受賞。巨人の戸郷翔征との激しい競り合いからスルスルと抜け出して圧巻の受賞。短縮シーズンでの二桁勝利は、数字以上の価値がある。勝ち投手の権利を得てからリリーフ陣がつかまって逆転された試合も多いので、実質的には14勝を挙げて最多勝に輝いた巨人の菅野智之に比肩する成績だった。沢村賞を受賞した中日の大野雄大に僅差0.09で届かなかった防御率第2位も立派。最終戦に先発して完封したら逆転もあったのでは。真っ向から速球を全力で投げ下ろす潔さと、甘いマスク。実力と共に女性からの人気も博することだろう。エース大瀬良大地が故障離脱したこともあって、今や名実ともにカープのエースとなった。5位に沈んだとはいえ、後半は先発で九里亜蓮が、抑えでフランスアが戦力になってきた。松山竜平と田中広輔も国内FA権を行使せず残留。若手も捕手の坂倉将吾、内野の小園海斗、外野の宇草孔基など、そこそこ伸びてきている。内部からの世代交代の萌芽が見え始めているところが、佐々岡真司監督というより、裏方のスタッフ陣の努力の賜物。
 広島カープ以外に目を向けると、セリーグを制した原辰徳監督の飽くなき補強の努力。オフシーズンだけではなく、シーズン中盤の7月に入っても楽天の高梨鉄平投手をトレードで獲得など、その努力を怠らない姿には脱帽。野球評論家が「そこまでの努力をしたセリーグの球団は他にない」とした評には頷ける。また度重なるトラブルなどで実質戦力外になっていた澤村拓一をロッテに放出して、NPB全体を俯瞰して新たな活躍の場を与えたことなども「選手に活躍の場を与える」という意味で評価できる。だからこそ菅野智之も快くメジャーに送り出してやって欲しい。一方で日本シリーズにおける巨人の対ソフトバンク2年連続の4連敗。短期決戦だから運不運もある。しかしその答えは3年前に既に出ていた。何度も盗塁を試みるカープの選手に、甲斐キャノンが炸裂して、全て刺殺。セリーグとパリーグの実力の差を痛感したシーンだった。ソフトバンクの要は甲斐拓也。甲斐拓也や千賀滉大をはじめとした主力選手たちが育成出身。「競わせて育てる」という点で、ソフトバンクはFAで選手取り放題である巨人の逆を行っている。しかしFA選手は年齢的に選手としての峠を超えており、移籍後の故障や劣化も多い。加えて高年棒の複数年契約や引退後のコーチ補償などで、選手に切羽詰まった感がなくなるとも聞く。お金があれば、人気があれば強くなるとは限らない(ソフトバンクはお金があるが)。かつて広島カープに3連覇されて目覚めたはずの巨人スタッフ。改めてソフトバンクに、同じ課題を突きつけられた。それなのに今年もFAでDNAから井納と梶谷を獲得。原辰徳監督というより、巨人経営陣の●●に付ける薬はない。

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