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上田秀人「隠密鑑定秘禄1️⃣・退き口」

★4月15 テレビ体操、通算4,096日目。上田秀人「隠密鑑定秘禄一・退き口」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 十一代将軍家斉は、御用の間の書棚で不審な書物を発見する。「土芥寇讎記(どかいこうしゅうき)」――諸大名二百数十名の辛辣な評価が記された人事考課表。『編纂を命じた五代綱吉公は、これをもとに腹心を抜擢したので』。そう推測した家斉は盤石の政治体制を築くため、綱吉に倣うことを決意する。白羽の矢を立てられたのは小人目付として諸国探索経験のある射貫大伍。命を懸けた至難の隠密調査が命じられる。
 どうしてこうも松平定信は悪く書かれるのであろう。本作品は新将軍・家斉と老中首座・松平定信の知恵比べの始まりである。ようやく宿敵である田沼意次を引きずり下ろした松平定信。しかし若くして将軍に就いた家斉は、松平定信の傀儡になるまいと秘策を立てる。唯一の家斉の味方が、御側御用取次である70歳のベテラン小笠原若狭守信善である。「上様」と呼ばれながらも、僅か15歳で子ども扱いされて、実権を幕閣に握られる虚しさ悔しさ。本作品は「子ども将軍の逆襲」である。まだ第1巻なので物語は緒に着いたばかり。しかし早くも田沼意次の復権への野望、伊賀者たちと射貫大伍の暗闘、黒鍬者・森藤の娘である佐久良との恋の予感などサブストーリーもたっぷり用意されている。この先がまことに楽しみである。


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