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吉永友愛「キリシタンの里 祈りの外海(そとめ)」

福岡県柳川市で真宗大谷派「多福寺」の住職を務めている従兄が送ってくれた写真集。吉永友愛「キリシタンの里 祈りの外海(そとめ)」(長崎文献社)。
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 本書は長崎県にある外海町に暮らすクリスチャンたちの、信仰や日常生活を写したものである。1587年に豊臣秀吉が全国に「バテレン追放令」を、1614年に徳川家康が「キリシタン禁止令」を発してから、1873年に禁教が解けるまで、キリシタンは迫害から逃れて密かに信仰を守り続けてきた。迫害や弾圧の中で、貧困の中で信仰を守り続けた信徒たち。キリスト教由来の聖画像を密かに拝み、教理書や教会暦を拠り所として信仰を実践した。外海から五島列島にも、隠れキリシタンは広がっていった。ようやくカトリックに復帰した人々は、祈りの場である教会を、19世紀後半に赴任したド・ロ神父の指導の下に、過酷な労働奉仕で造り上げた。信仰に厚いこの地域は、後に二人の枢機卿と多くの聖職者やシスターを輩出。
 長崎県に生まれた吉永友愛は、野外ミサや、代々の祭壇、結婚式や洗礼式や告別式、初聖体、墓掃除や草刈りなどのシーンを、35年間に渡って撮影してきた。写真を観た実感は①素朴で土着的な信仰である。②被写体が女性がほとんどで働き盛りの男性が見当たらない。人口僅か3,576人の小さな漁村は、潜伏キリシタンとしての生活がもたらした貧しさが生んだ結果である。自分の通っている教会はプロテスタントであるからして、カトリックの礼拝や習慣はよく知らない。決定的に違うのはマリア信仰。プロテスタントは聖書主義であるからして。しかしカトリックにせよ、プロテスタントにせよ、ご高齢の女性の祈りは胸を打つ。信仰の前で無になっている姿は、真の信仰とはかくあるかと思わせる。本書で捧げられる祈りの日々や姿に、心を強く揺さぶられる。真の意味で神々しい写真であることは、撮影者が信仰者の生活や心の底にまで降り立っているからこそ。

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