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田中勇一+小林義崇「やりたいことはよくわかりませんが、私の適職教えてください!」

田中勇一+小林義崇「やりたいことはよくわかりませんが、私の適職教えてください!」(徳間書店)。著者=主人公の田中勇一氏は銀行勤めからキャリアカウンセリングの事業を立ち上げた方。原稿をまとめた小林義崇氏は元国税局のライター。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B095RZ567Y/
 ちょっと笑ってしまうようなタイトルだが、転職希望者の悩みを人生の達人が受け止めて導く形式の転職ガイダンス。設定は30歳の大手商社マン・笹山が転職に悩んでバーで飲み過ぎる。それをお店で助けたキャリア支援のジョン田中が笹山の悩みを聞く。聞けば給料アップを目論んで、転職を考えているが、具体的なアイデアも自信もないそうだ。悩みを聞いた上で、ジョン田中は、笹山自身も認識できていなかった彼のプロフィールを明らかにして、転職への願望を具体化する手伝いをする。無償でここまでジョン田中が、笹山にサービスする必要もないはずだが、そこは仮想転職劇のビジネス指南書である。
 ジョン田中が笹山に教えたこととして、キャリアチェンジにおける誤解は、次の五つ。①安定した仕事につくのが一番②我慢していれば報われる③自分にはやりたいことなんてない④やりたいことを仕事にするにはお金や才能がいる⑤失敗したら、二度と立ち直れない。そしてステップ2️⃣として自分とは何かを明らかにする、ステップ3️⃣として自分の強みを探す、ステップ4️⃣として本当にやりたいことをハッキリさせる、そしてステップ5️⃣として実際に仕事としてみる。それぞれの中に、今の会社に残る選択肢もあれば、小さく始めてテストするリスク回避などのノウハウが平易に語られている。
 タイトルが表すように「自分が何をしたいか」「自分が何をできるか」は意外とわからないものである。前者を明らかにするには収入や地位などの要素を排除しないと、無意識に自分に嘘をつきがち。能力の点ではキャリアによる技術と、手先が器用とか社交性豊かとか先天的な要素がある。その能力を推し計るのには「何を頼まれているか」。両者を併せて目的を明確にするのが「誰を助けたいか」。この本が役に立つのは、働き盛りの転職希望者だけではない。新卒採用試験に向かう学生、定年を迎える年齢層。いずれも人生の転機を前に「自分とは何か」は避けられない命題なのである。

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