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カフェで大騒ぎする自分の子供を静まらせる電話


小学館ビッグコミックの表紙は藤子不二雄Ⓐ先生だった。為井英貴氏のイラストは、先生に生き写し。特集記事でも組まれているのかと思いきや、表紙イラストだけであった。ありし日の先生を想うと共に、未だにこの世にいらっしゃらないということが信じられない。そう言えば最近は先生から「今晩は空いているかな?」と飲みに誘ってくれる電話がかかってこないのが寂しい(当たり前だが)。

 5月6日のHint-Potというネットサイトで面白い記事を読んだ。「踊る漫画家」(インド映画がお好き)と言われるTwitter 漫画家のコニシさんが、カフェで大騒ぎする自分の子供を静まらせるために「あっ、電話しちゃおうかなァ」と呟いてピタリとおとなしくさせたと母親を目撃したと言う。その電話相手とは「笑ゥせぇるすまん」。つまり喪黒福造である。藤子不二雄Ⓐ先生の描く「怖い系」のキャラクターで、調子に乗ってルールを逸脱する登場人物たちを最後に指差しして「ドォーン」と奈落に突き落とす。

  藤子不二雄Ⓐ先生が藤子・F・不二雄先生とコンビ解消してからの漫画はこの系統が多い。「魔太郎がくる‼️」「ブラック商会変奇郎」などの代表作がある。藤子不二雄Ⓐ先生の「怖い系」漫画が支持を集めるのは「弱い立場」に立った人の側に立っているから。喪黒福造はOLを見下す上司たちに鉄槌を下す。だから喪黒福造は女性に大人気だった。魔太郎はいじめっ子たちに徹底的に復讐する。実は連載中の人気投票では上位にいなかったが、編集部には「スッキリした」「気持ちが救われた」という手紙が続々と寄せられていたそうだ。いじめられる側にとっては深刻な大きな問題。その気持ちを解放してくれる藤子不二雄Ⓐ先生に感謝の手紙が殺到したのだ。

  しかし一方で藤子不二雄Ⓐ先生や藤子スタジオの皆さんは「魔太郎がくる‼️」の内容には逡巡があったようだ。いじめられっ子に称賛される一方で、報復ストーリーに批判的な世間の指摘を心配されていた。だから相手をコンクリート詰めして復讐する回などは復刻リクエストが多かったが、とうとうお許しが出ず門外不出となった。それでも「藤子不二雄Ⓐランド」刊行の際は迷った末に「魔太郎がくる‼️」をラインナップに加えさせてくれた。ちなみに「笑ゥせぇるすまん」は「藤子不二雄ランド」に元々収録されていなかったので収録外。「藤子不二雄Ⓐランド」は藤子不二雄Ⓐ先生の作品を最もカバーしているが、刊行から長い年月が経っていて、かなりの欠本が出ている。後継者に訊いたところ、現在は重版を検討中とのこと。映像フィルム発見が話題になっている「フータくん」なども含めて、藤子不二雄Ⓐ先生ファンが改めて先生の作品を楽しめる環境が早く復帰してくれればいいなと思う。


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