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三島浩司「 MURAMURA満月の人獣交渉史」

徳間SFコレクション電子復刻第11弾。三島浩司「 MURAMURA満月の人獣交渉史」(徳間書店)。伊佐チエはいわゆる普通の女子高生。彼女が卒業した小学校が、この世から忽然と消えてしまうという怪事件が発生。事件の解決の鍵は、チエの曾祖父である猟師・小五郎のつくった夢の世界「夢羅(むら)」にあった。同級生男子のコザケンらを従え、夢羅に潜って、果敢に闘いを挑むチエ。そこでは敵も味方も魔獣たち。伝説の化け狐・キトネを追う。操るは、先祖伝来の滅魔の銃。
 「ルナOrphan’sTrouble」で第4回日本SF新人賞を受賞した三島浩司。受賞後第一作は、長篇ファンタジー。稲荷信仰をベースにした、人と獣の生存を賭けた駆け引きが、太古から現代に至るまで繰り返される。スタジオジブリ映画「もののけ姫」では、太古には巨大で智恵がある獣たちが雄々しく生きていた。「夢羅」でも神通力を持った神狐などの神獣たちが、自然界を侵食する人間に、棲み分けの境界線を求める。人間に神獣が憑依するため、チエは友を救うために闘う。チエを助ける鷹や山犬とのチームワークは、ユーモラスで愉快。ガルパン的に活躍する猟銃少女チエのユニセックスな魅力。そして人獣がことばを交わして、心を通わせる、ドリトル先生的な絆愛。クライマックスに向かう銃撃戦は、夢か現かのスピードアクション。エンディングで描かれる人と獣の交渉結果にホロリ。
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