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阿川大樹「横浜黄金町パフィー通り」

阿川大樹「横浜黄金町パフィー通り」。電子復刻第54弾。京浜急行の黄金町駅。そこは外国人娼婦たちのたむろする売春街。間口一間で、二階三階へと続く「ちょんの間」が連なる長屋形式の構造物。性産業が栄える一方で、自らの街を横浜の恥とされた住民たち。地上げで街を捨てざるを得なかった主人公の一人である老いた徳治。いつの間にか街は風俗産業に乗っ取られてしまっていた。小学校の登校ルートが、風俗街の中心を通ることに反対意見が出たことから、街の在り方に疑問を持った校長とPTA会長の行動から何かが変わる。風俗街への牽制のために設立された「風俗拡大防止協議会」による清掃活動。そこに住民の自発的な動きを待っていた神奈川県警と横浜市も乗った。2005年に神奈川県警は黄金町風俗街の封鎖に踏み切る。一過性の摘発ではなく、継続的な監視体制を引いた。その結果、町はカラッポになり、汚名だけが残った。新しい街づくりのために、アーティストたちが集められ、街の再生を図る。その象徴的なイベントが「アルテックス」。この物語のもう一人の主人公であり、語り部でもある女子大生・志織は、フォトグラファーとして街の変化を撮り続け、自らもアルテックスの旗手となる。
 売春、人身売買、麻薬、暴力団。負のファクターとの、恐れ慄きながらの闘い。長年住み慣れた街を去った悔悟。色街殲滅に立ち上がった警察官たちの昂り。あらゆる経路をすっ飛ばして出てきた横浜市長。街とは何の関わりもないけれど、新しい街の創生に情熱を傾ける若人たち。自分たちの街を愛してくれることを喜ぶ、旧来の住人。ダークシティからの蘇生のために集まった熱気の高まりに、思わず落涙。
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