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「港区おじさん」にハマる

 在宅勤務で昼夜逆転(というか昼も寝ていないから、あんまり寝ていない)。 原因はYOUTUBEやTikTokで観れる「港区おじさん」にハマってしまったこと。東京カレンダーが作った1分から1分半くらいの全121回の映像番組。このところ週に半分くらいは在宅勤務なので、自宅で晩酌した後に熟睡してしまい、トイレに行きたくなって深夜覚醒。そのまま直ぐに寝てしまえばいいのだけれど、ついついPCやタブレットを見てしまう。その時に引っかかったのが「港区おじさん」だった。
 港区おじさんの主人公である船田武彦(モデル加藤章太郎)はアラフィフ。大変な資産家らしく、仕事は投資くらいで、後はプラプラしている。金払いが良く、西麻布界隈で遊び回っている若い女性たちに呼び出されても「呼んでもらえるうちが花」と、丸ごと支払いを引き受ける。こんな船田を利用して、大貫由美(モデル留奥真依子)はタクシー代までタカり放題。しかし都会の生活に倦み疲れた由美は故郷である静岡に帰る。彼女を心配して駆けつけた船田の包み込む優しさに目覚めた由美は、生気を取り戻して港区に戻る。二人はお互いへの愛情を自覚し始める。起業を志した由美だが、前途にはいくつもの多難が待ち受ける。それは港区の中での生き残りであったり、丸の内の一流商社への切り込みや、代々木上原女子軍との対決であったり、新宿歌舞伎町ホスト軍団との一戦であったりする。影になり日向になっての船田の助けで、由美の経営する会社「ビューティ・シークレット・ダイアナ」は急成長を遂げ、押しも押されぬ注目の優良企業となる。そして由美自身も人格的に一皮も二皮も剥けた、大人の女性に成長する。しかしその頃から、船田は由美に微妙に距離を置き始める。
 今は最も先端的に食やファッションをリードしている港区、それも西麻布。そこで生活する人々を象徴的にグルーピングして戯画的に描いている可笑しさ。どちらかと言うと女子目線でBLっぽい。Hなシーンや濡れ場は一切ない。番組中に何度も登場する船田の「秘技」の数々。「着席前全額支払い」とか、「タクシー代常に2万円」とか、「その場にいなくても全額払い」とか、タカる女性を引き連れて「大名行列」とか男の夢というか妄想群。夜更かしの港区族に対抗する、オーガニック系の「代々木上原女子」とか、鉄の規律の「新宿歌舞伎町ホスト軍団」とか、女の浅ましさを象徴する「寄生女子」とか、グループの色分けも良くできたゲームのよう。合間合間に登場する個性的な登場人物たちも、バツイチだったり、事業に失敗していたりして、存在感がある。それぞれが起死回生のカムバックを果たし、それを港区族たちが後押ししたり、心温かく迎えたりして、悲喜こもごもの人間ドラマも観させる。
 あるグループ企業の社長だった知人が、大変なアダルト映像マニアだった。その映像収集は、立場上で独居マンションを与えられていたので、天文学的な蒐集となっていた。彼が言うには「今どきの人々は、1時間半の映画を自宅で座ってDVD鑑賞する根気がない。だから5分単位くらいのショートストーリーをいくつもアップする。そうじゃないと、みんな観ないから」と言っていた。「港区おじさん」なんかもそうだろう。一作一作観るのは、片手間でいい。それぞれの話が独立していて、週刊誌の読み切り漫画みたいにどこからでも楽しめる。脚本も見事だったけれど、そういうガラケイ時代の電子漫画みたいな観せ方も興味深い「港区おじさん」だった。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLbTnSlnwMIPPyFafT5FmPVwa__Mb9uTtp

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